ミトコンドリアは、ほとんどすべての真核生物に存在する細胞小器官で、ATP 生産が主要な役割です。
ミトコンドリアの構造
色素体と同様に二重の膜に包まれていて、独自のゲノムを持ち、半自立的に増殖します。
内膜は内部に向かって突出し、幅 20 〜 30 nm の棚上のクリステを形成することにより表面積が著しく拡大しています。クリステおよびび内膜には、電子伝達に関与する諸酵素とそれに共役した酸化的リン酸化に関与するATP 合成酵素、各種輸送体が埋め込まれています。
マトリックス
内膜の内側はマトリックス (礎質) と呼ばれていて、ミトコンドリアの代謝機能に関わる多くの酵素が存在しています。ミトコンドリアゲノムもマトリックスに存在しています。
ミトコンドリアゲノム
動物のミトコンドリアゲノムは比較的小さい環状二本鎖 DNA で、ヒトのものは約 15.6 kbp です。
これに対し、植物のミトコンドリアゲノムは大きく、約 180 〜 2400 kbp です。しかし、植物のミトコンドリアゲノムにリボソーム・タンパク質の遺伝子が多い他は、コードする遺伝子の数に大きな差はありません。これは、植物のミトコンドリアにはイントロン、スペーサー、反復配列などが多く含まれているからです。
シロイヌナズナの NAD1 (NADH デヒドロゲナーゼサブユニット1) 遺伝子などのように、トランススプライシング (2 つの異なる RNA 分子間で行われるスプライシング反応) を受けるイントロンを持つものもあります。
RNA 編集
さらに、植物に特徴的な現象として、RNA 編集があります。これは転写後、RNA の塩基が変化されるもので、ミトコンドリアや色素体で見られます。被子植物では、C から U への変換のみが知られていますが、シダ植物やコケ植物ではこの変化に加えて、U から C の変換も見られます。
ミトコンドリアの遺伝情報
色素体ゲノムと同様に、ミトコンドリアも自分自身の遺伝情報だけでは機能しません。90 % 近いタンパク質を核遺伝子に依存しています。
ミトコンドリアの起源
ミトコンドリアの起源は好気性細菌の細胞内共生に由来すると考えられています。