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ゲノムの概念と、その大きさ

ゲノムとは、生物が生活していくのに必要な最小限の遺伝子を含む、1 組の染色体と定義されます。1920 年に H. Winkler が提唱しました。真核生物ではその種がもつ連鎖群の総数、すなわち、一倍体に含まれる染色体の総数で、DNA レベルでいえば、それら染色体の全 DNA 量ということになります。原核生物は単一の連鎖群をつくっているので、細胞のもつすべての遺伝情報量ということになります。

[目次]

 

ゲノム説

木原均らによるコムギのゲノム研究以降、ゲノムという言葉がよく使われ出しました。木原はコムギの仲間を材料とした、倍数性や種間雑種に関する広範な細胞遺伝学的研究から、ゲノム説を提案しました。各染色体は、多数の遺伝子をもつにもかかわらず、それ単独では機能することができないという点。また、それらはその種が通常もつ一揃いをセットとしていなければ正常に機能しないという点。この 2 点が、ゲノム説のポイントでです。

ゲノム説について次のようにまとめることができます。

  1. ゲノムは植物の生存に必要な遺伝学的単位で、1組 の染色体のセットまたはそれに含まれる DNA の総量
  2. 二倍体の植物では、生殖細胞 (単相細胞) には 1 ゲノム、体細胞 (複相細胞) には 2 ゲノム存在する
  3. 同一の遺伝子を、同一の順序で配列している相同染色体は、同一ゲノム中には存在しない
  4. ゲノムを2つもつ胞子体では,、減数分裂前期に相同染色体間で接合し、二価染色体を形成する。相同染色体間での相同部分や遺伝子の交換は、その結果できる配偶子の生存に何ら影響を与えることはない。したがって、メンデル遺伝は相同ゲノム間の雑種において成立する。
  5. 雑種において非相同染色体が存在する場合、互いに対合できないので、一価染色体が観察される。非相同染色体からなる場合を非相同ゲノムとする。
  6. ゲノムは生活機能の単位でもあるので、1 組のゲノム中の染色体あるいはその一部分の重複や欠失は、生活上障害を生じたり死を招いたりする
  7. 染色体、あるいは核に存在するゲノムを、とくに核ゲノムという。細胞質オルガネラに存在する細胞質ゲノムとは区別される。両ゲノムは協力して生物の全機能を発揮する。

ゲノムの大きさ

染色体数はそれぞれの種によって固有のものです。全染色体に含まれる DNA 量も種によって決まっています。ですので、ゲノムの大きさを表すには DNA 量が適切です。

細胞当りの DNA 量を調べる方法はいくつかあります。特に、正確にはかるためにはフローサイトメトリーが用いられます。

高等植物の代表的な種の DNA 量

高等植物の代表的な種の DNA 量は以下の表の通りです。

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シロイヌナズナの 1.45 × 108 bp (145Mb、1 Mb = 100 万塩基対) から、ユリ科キヌガサソウの 1.47 × 1011 bp (147 Gb、1 Gb = 10億塩基対) まで、種間で1000倍はどの変異があります。同じイネ科のイネとパンコムギを比較しても、その DNA 量は 40 倍もの差があります。

基本数と染色体数

1 ゲノム当りの染色体数を基本数とよび、x で表します。

 

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また、配偶子当りの染色体数は n で、体細胞当りでは 2n で表します。

 

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たとえば、コムギ属には 2, 4, 6 の 3 種類の倍数性が存在していて、それぞれの染色体数は 2n = 14、28 、42 になり、基本数は x = 7 ということになります。

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