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植物における DNA 転写調節・修飾・遺伝子発現制御

転写については、以下の記事も参考にしてください。

 

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[目次]

 

コファクター、メディエーター

直接DNAに結合はしませんが、転写調節に関与するコファクターと呼ばれるタンパク質があります。転写を促進するものをコアクチベーター、抑制するものをコリプレッサーといいます。これらの中にはヒストンのアセチル化やメチル化を触媒する活性を持つものがあり、クロマチンの構造を変化させ転写を制御しています。メディエーター複合体は、約 30 のサブユニットからなる巨大複合体で、DNA結合型転写制御因子と、Pol Ⅱ と基本転写因子が構成する基本転写装置の間を、コファクターと強調して橋渡しします。 メディエーター複合体は、基本転写因子 TFIH 内のキナーゼ活性を促進します。

ヒストンの修飾

コファクターの中には、ヒストンのリシン残基をアセチル化する酵素 (HAT) 、メチル化する酵素 (HMT) などが含まれています。一般に、ヒストンのアセチル化により転写は促進されます。メチル化は両義的な修飾で、ヒストン H3 の 9 番目のリシン残基がメチル化されると転写は抑制され、H3 の 4 番目のリシン残基がメチル化されると転写は促進されます。ヒストンの修飾は他に、リン酸化、ユビキチン化などがあります。これらの遺伝子発現に影響を与えるヒストンの修飾状態をヒストンコードと呼びます。

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エピジェネティックな制御

エピジェネティクス (epigenetics) とは、DNA 塩基配列の変化を伴わないで起こる遺伝子発現の変化に関する研究のことです。例えば、秋まき小麦の花成は春化処理によって促進されますが、これは低温処理が植物の遺伝子の塩基配列に変化を与えるのではありません。低温処理を受け た茎頂の細胞は細胞分裂を経ても低温処理を受けた「記憶」を維持していて、低温処理後数週間を経て花芽をつけます。このような現象をエピジェネティックな制御と呼びます。エピジェネティックな制御にはヒストンの修飾、DNA のメチル化 (主にシトシン)、クロマチン構造変化が関与しています。

転写後の制御

遺伝子発現の主要な制御は、転写開始の段階で行われていますが、その後の RNA 修飾からタンパク質分解に至る各段階での制限もあります。DNA を鋳型に合成された一次転写物は細胞によって異なるスプライス部分が使用される結果、同じ一次転写物から別の mRNA が作られる場合もあります (選択的スプライシング)。例えば、哺乳類の甲状腺では、ペプチドホルモンのカルシトニンが作られますが、脳では同じ一次転写物からスプライシングの違いによりカルシトニン遺伝子関与ペプチド (CGRP) が作られます。乾燥や温度ストレスに対する応答に関与するイネの転写因子 DREB2 の mRNA は、通常の生育条件下ではエクソン内に終止コドンが存在するため機能的なタンパク質を合成できません。しかし、高温条件下ではエクソン 2 をスキップしてスプライシングが起こり、機能的なタンパク質が合成されます。動物の受精卵ではポリ A が延長されると、その mRNA の翻訳が開始される例もあります。 mRNA の分解レベルでの制御もあります。mRNA の半減期は遺伝子によって異なり、長いものでは10時間以上、短いものでは30分以下です。ヒストン mRNA の安定性は DNA 合成に連動して変化します。S 期の半減期は1時間ですが、DNA 合成阻害剤を転嫁すると半減期は 10 分になります。この mRNA の安定性の制御には 3' 非翻訳領域中の配列やポリ A の長さが関係しています。細胞質の特定領域に局在する mRNA もあります。多細胞生物の形を決定する遺伝子の mRNA の中には卵の細胞質の特定領域に集まっているものがあります。細胞分裂の結果、細胞間で特定の mRNA の含量に差異が生じ、細胞分化が決定されるのです。

 


 

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