オーディオブックでフィリップ・E・テトロック、ダン・ガードナー『超予測力: 不確実な時代の先を読む10カ条』を聴了。
まっとうな確率論の本。
ただしあくまで読み物なので、難しい数学は出てきません。
以下、簡単なメモ。
予測力を高めるには?
予測力を高めるには、
- 予測対象について、確率論的に推論できる事象まで分解すること
- 新たな事実が発覚したら、その都度予測を修正すること = ベイズ的発想
- 予測結果を評価すること
このサイクルを回すことが必要。
要するにかなり根気のいる作業。
また、予測結果を評価するためには、予測を期限づけることも必要。これは、予測対象を分解することの含まれるが、忘れがち。
予測力を高めるための事例
例えば、「今後、第三次世界大戦は起こるのか?」を、予測したいとしましょう。
実は、「今後、第三次世界大戦は起こるのか?」を予測することはできません。
まずは、「5年以内に第三次世界大戦は起こるのか?」というふうに、予測を期限づける必要があります。予測を起源づけることで、ようやく予測のとっかかりになるのです。
つづいて、予測対象について、確率論的に推論できる事象まで分解します。
5 年以内に第三次世界大戦が起こるためには、例えば、5 年以内に独裁政権が隣国へ領土侵犯する確率、というふうに、より確率論的に推論しやすい事象へ、予測対象を分解します。「隣国へ領土侵犯する確率」がまだ曖昧であれば、領土侵犯をさらに「軍事力の不均衡に達する確率」へと分解します。そうすると、分解すれば、軍事費などを比較することで、だんだん予測へと近づくのです。
こういうふうに間題をどんどん「確率的に推論できる」事象まで分解することで、予測の精度を高めることができます。
「予測の精度が高まる」ことと、「予測が多くの人に受け入れられる」ことは、イコールでない
ただし、予測の精度が高まったからといって、必ずしもそれが多くの人に受け入れられるわけではありません。
どういうことか。過去の事例をもとに、ある保守政党が次の国政選挙で大敗し政権交代が起こる確率が 80 %だ、と予測したとしましょう。しかしこの保守政党の支持者が、「大敗する」という予測を受け入れる可能性は少ないでしょう。誰だって、自分にとって不利な予想は受け入れたくないものです。
また、過去の事例をもとに、今後 1 年以内に日本の株価が半減する確率は 50 % だ、と予想したとしましょう。50 %は「起こるとも言えるし起こらないとも言える」と言っているのと同じです。確率論的に精度が高い予測だとしても、起こる or 起こらない、が 50 % の予測を、多くの人は予測とは言いません。
このように、予測力を上げるには、確率論のリテラシーを高めるしかありませんが、しかし、特定の少人数集団だけ確率論のリテラシーが高まっても、その予測が受け入れられるとは限りません。
しかし予測することの必要性は多くの人が認めるところだと思います。
となれば必要なのは、私たちの社会全体が、もっと「粘り強く確率論的に考える力」を身につけることだと言えるでしょうね。