病害虫防除の基本的な考え方, およびその方法を紹介するシリーズ「病害虫防除の基本的な考え方」. 前回は, 主な農業害虫について紹介しました.
今回は, 植物の害虫になる代表的な昆虫を紹介します.
アザミウマ類
成虫の体長は 1 〜 2 mm 程度で, 肉眼ではなかなか見つけられません. ミナミキイロアザミウマ, ミカンキイロアザミウマなどが野菜に被害を与える害虫として知られています.
幼虫も成虫も植物の葉や茎などのやわらかい部位を削るようにして吸汁します. 吸汁された葉は, 色が抜けたり, 白い斑点ができて, 落葉することもあります.
また, トマト黄化えそ病のウィルス媒介者としても知られます. トマト黄化えそ病は, トマトの葉に褐色の斑を生じさせ, 甚大な被害をもたらす.
カメムシ類
種類が非常に多く, 日本には 1000 種類以上が生息しています. 体色や大きさ ( 5 〜 20 mm ) はさまざまだが, 五角形に近い形をしているのが特徴的です. また, 外敵に襲われると悪臭を放つ性質がありあます.
イネに寄生し吸汁するため, 吸汁痕から菌が侵入し, 変色米の原因になります. 成虫は群で飛来するため, 防除は簡単ではありません.
アブラムシ類
成虫の体長は 2 〜 4 mm. 分類学上はカメムシの仲間ですが, カメムシのように飛んだり跳ねたりすることはありません.
集団で葉や茎の養分を吸汁し, 生育を阻害します. また, 多くのアブラムシ類はモザイク病などのウィルス病を媒介します.
チョウ類
チョウ類の幼虫には, アゲハチョウ, モンシロチョウ (アオムシ) などのイモムシ類や, イラガ類, ドクガ類などのケムシ類がいます. イモムシ類とケムシ類の違いは, 幼虫の体表に毛がないもの = イモムシ, 毛があるもの = ケムシ類です.
これらチョウ類の幼虫は, 葉や花を食べる「食害性害虫」に属しています.
バッタ類
バッタ類のなかで代表的な害虫はオンブバッタです. ここでは, オンブバッタについて紹介しましょう. メスのうえにオスが, まるで親子のようにのっているのが特徴です. 食害性害虫で, 多くの種類の野菜, 草花を食します. 特に好まれるのはキク科やシソ科です.
甲虫類
甲虫類の害虫としてよく知られているのは, カミキリムシ類, コガネムシ類, ハムシ類などです.
コガネムシ類は, 地上部では成虫が葉や花などを食します. また, 土のなかでは幼虫が根を食します. また, 成虫は飛び回ります. これらの点から, 非常に厄介な害虫ということができます. サツマイモなどでは, 幼虫の食痕から病原が感染することもあります.
コナジラミ類
害虫としてのコナジラミ類は, オンシツコナジラミとタバココナジラミが代表的です.
幼虫は, 大きさが 1 mm 以下で, 葉から養分を吸ったり, 排泄物によってすす病の発生の原因になります. 成虫は, 大きさが 1 mm 程度で, 白い翅をもち, 淡黄色の体をしています.
***
今回は 農業害虫になる昆虫類について紹介しました. 次回は, 農業害虫になるダニ類・センチュウ類について紹介します.