病害虫防除の基本的な考え方, およびその方法を紹介するシリーズ「病害虫防除の基本的な考え方」. 前回は, 病害虫発生の予測について説明しました.
今回は, 主な農業害虫について説明します.
病害虫の原因を見極める
植物の病害虫の原因は, 細菌・糸状菌・ウィルスといった病原による病害だけではありません. ダニ, センチュウ, 昆虫などの害虫もまた, 病害虫の原因です.
圃場で, 植物がしおれたり, 変色するなどの症状がみられたら, 病原菌が原因なのか, 害虫が原因なのかを判別して, 原因に応じた対処法をとらなければなりません.
たとえば, 葉がかじられていれば, 害虫の被害だとすぐに判断できます. ただ, 組織の変色や生育不良であっても, 病原菌ではなく害虫が原因であることもあるので, 注意しなければなりません.
害虫の 2 つのタイプ: 吸汁性害虫と食害性害虫
害虫のサイズはさまざまで, ダニやセンチュウなどは肉眼では見えないほど小さいですし, 昆虫は数 cm ほどもあります. 害虫の好みの植物もさまざまです. どの害虫がどの植物が好きなのかは, だいたい決まっています. さらに発生時期や植物の被害部位も害虫によって特有で, 肉眼では見えない害虫でも, 被害の原因に鳴っている害虫の種類を推察することができます.
害虫は, 植物への被害の与え方によって, 「吸汁性害虫」と「食害性害虫」の大きく 2 つのグループに分けられます.
吸汁性害虫
- 植物の体内の汁 (養分) を吸って被害を与える害虫
- ダニ類, アブラムシ類などが代表例
- 身体が小さいものが多く, 多発するまで被害に気がつかないことが多い
食害性害虫
- アオムシなどのように植物体を直接食べる
- 穴を開けたり食い切ったりしたりして被害を与える
植物の被害部位による分類
害虫の分類は, 植物への被害を与える部位によっても分類されます.
地上部に被害を与える
- 葉, 芽, 新梢, 花など
- アブラムシ類やアオムシ類
地面と接する地際部に被害を与える
- 例えば, ネキリムシの代表格であるカブラヤガの幼虫は, 作物の苗を字際部から切断する
地下部に被害を与える
作物別主要害虫と被害区分
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今回は主な農業害虫を紹介しました. 次回は, 害虫のうちでも昆虫類について取り上げます.