アブシシン酸 (ABA) は植物ホルモンの 1 つで、
発見されたのは 1960 年頃。綿花の果実落下の研究をしていたグループと、ジャガイモ塊茎やカエデの冬芽の休眠を研究していた別のグループとで別々に発見されました。この 2 つのグループが発見した物質は当初、別々に命名されていましたが、 1965 年になって同一であることが判明し、ABA と名付けられました。
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生理作用
ABA は、乾燥や冬の寒さなど過酷な環境に耐えるために合成されます。たとえば、土壌が乾燥して水ポテンシャルがゼロになると、植物のアブシシン酸含量が増加します。また、気孔の開閉にも関与していて、葉にアブシシン酸を処理すると気孔が閉鎖します。
種子の成熟と休眠を促進する働きもあり、種子が完成してから乾燥種子になる過程を制御しています。つまり、種子休眠には必須の植物ホルモンなのです。
オーキシンによる成長促進作用を阻害することもあります。これによって葉柄脱離による落葉を促進します。
サイトカイニンとは逆に、葉の老化を促す作用もあります。
そのほか、花芽分化の促進、受精や結実の促進、果実の着色をよくしたり、鮮度保持を高める作用もあります。
アブシシン酸は、肥料の吸収を促進する作用もあるので、肥料登録がされています。
生合成
アブシシン酸はカロテノイドから合成されることが知られていて、葉や根、成熟中の果実でつくられます。
また、天然アブシシン酸を生産する微生物が発見されていて、その微生物を培養して大量に生産されています。