植物は, 生育している場所の環境を感知して成長量を調節したり, 生育相の転換を決定していきます. このような植物にとって, 温度は光と同様, 重要な情報源です.
【目次】
植物の成長と温度
温帯地域は四季の変化があり, 温度が毎年周期的に変化します. 温帯地域が原産の植物は多くの場合, 原産地の四季の温度変化と一致しながら, 発芽, 花芽分化・発達, 休眠導入・打破など, 生活環の重要な各過程での適温が周期的に変化します.
植物の種類や生育ステージ, 機関によって成長の限界温度や好適温度は異なります. ですが, 一般的には, 低温から温度が上昇するに連れて成長速度は早くなります. ピークは 20 〜 35 度です. このピークになる温度が, 植物の最適温度と言えます. 限界温度を超えると高温障害, 限界温度以下になると低温障害になり, 枯れてしまいます.
温周性と植物の成長
日周期の温周性
植物の生育適温は一定ではありません. 周期的に変動しています. よく成長するのは, 昼の温度が夜温より数度高いときです. 植物のもつこのような性質を, 温周性 (thermoperiodicity) といいます.
年周期の温周性: 低温要求・高温要求について
植物は, 四季の変化による年周期での温度変化にも対応します. このような長周期の温周性も, 植物にはあります. 植物の生活環で重要な, 発芽, 花芽分化・発達 休眠導入・打破などの適温が, 季節変化に対応して年周期で変動するのです.
開花誘導や, 種子や芽の休眠打破のためには, 低温が必要な場合があります. これを低温要求 (chilling requirement, low temperture requirement) と言います. 低音要求は, 年周期の生活環のなかでの温度要求で, 温周性の一環です. 生育・開花に関わる低温要求は,
- 花芽誘導
- 成長の停止 (休眠誘導)
- 成長の開始 (休眠打破)
の 3 つの場面です.
夏に休眠する球根類では, 休眠打破に高温要求をもつものがあります.
花卉生産では, こうした長周期の温周性を利用して, 生活環の各過程で適温を人為的に与える温度処理を行い, 生育や開花を調節しています.