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日記系雑記ブログ: 農業、データサイエンス、自然

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農業のおもな栽培技術と作業

農業の技術は, 栽培・飼育する動植物によって多種多様ですが, おおよそ共通するものもあります. この記事では 栽培における農業に関する技術と作業について, 簡単に紹介します.

1. 作付け体系

作付け体系とは, 栽培する作物の順序や組み合わせのことです. これには, 連作, 輪作, 混作, 間作などの方法があります.

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1.1 連作

同じ圃場に, 1 つの作物を連続して栽培することを連作といいます. 商品価値の高い作物を連続して栽培・収穫できるなどの利点がありますが, 連作障害が発生して, しだいに収量や品質の低下を招いていしまうことがよく問題になります.

1.2 輪作

作物の種類や順序, 組み合わせを変えて栽培することを輪作と言います.

作物は, 種類ごと・品種ごとに特有の分泌物を根から土壌へ放出するため, 根圏の微生物草に変化が起きるので, 輪作によっていろいろな作物や品種を栽培すれば土壌の活性が高まります. そのため, 土壌養分の均衡が保たれ, 病害虫や障害の発生が抑えられ, 持続的な栽培・収穫が可能です.

輪作の効果は, 作物の組み合わせ方によって違います. たとえば, トマト → ハクサイ → スイートコーン → ダイコンのように, 養分吸収力の高いイネ科作物や, 根部の発達する作物などを取り入れると輪作の高い効果が期待できます.

1.3 混作・間作

数種類の作物を同時に栽培することを混作・間作といいます. 混作・間作は, 輪作と同じ効果が期待できます. 田畑を水田状態と畑地状態にして交互に利用する田畑輪換という方法もあり, これは雑草の発生が抑えられる効果もあります.

2. 作物・品種の選択

作物の種類の選択では, 適地適作が基本です. 品種選択における第一の留意点は, 予定の栽培期間 (= 播種から収穫までの期間. 作期) で播種から収穫まで行えるかどうかです.また, 品種選択において考慮しなければならない点は, 生態型, 早晩性, 耐寒性, 耐暑性, 耐病性, 品質や収量などがあります.

※生態型とは・・・地域ごとの環境条件によく適応して遺伝的に分化した植物の集団を生態型といいます. 生態型をもつ品種が生態型品種です. これにはたとえば, ダイズやソバなど, 日長に敏感で短日にならないと開花しない秋型品種や, 日長に鈍感な夏型品種, ダイコンやハクサイなどの秋播き品種・春播き品種・夏播き品種などがあります.

さらに, 田畑の状況 (地力や作付け体系など) や労働力, 生産物の用途・販路など, 営農全体を総合的に考えて品種選択することも重要です.

3. 作期の確定

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作期の確定には, 地域の環境条件と品種の特性を考慮する必要があります. 作期の幅を広げる技術としては, 品種選択や栽培技術の工夫の他, ハウスやトンネルといった施設を利用した環境条件の調節もあります.

4. 耕地の改良 (土壌改良)

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4.1 耕地の改良

土壌改良の目標としては, 土壌の保水性や通気性, 排水性を向上させること, 養分バランスを保持すること, さまざまな土壌生物が生息できるようにすることなどが挙げられます. こうしたことを「地力を高める」と言います.

※土壌生物とは・・・カビや細菌などの土壌微生物と, センチュウ, ミミズなどの土壌生物に大別されます. 植物に有害な生物もいますが, 大部分の土壌生物は植物と共生しています.

土壌改良には, 有機物の投入, 深耕, 輪作などの方法があります.土壌改良は, 即効性のありません.何作にもわたって作物の生育状況を確かめながら行う必要があります

4.2  耕地基盤の整理

用排水施設や排水溝, 灌漑施設の設置などがあります. 耕地基盤の整理に取り組む際には, 地域の生態系に悪影響を与えないように配慮しなければなりません.

5. 耕耘

耕耘は「こううん」と読み, 耕起, 砕土, 整地の作業に分かれます.

5.1 耕起

耕起とは, すき (プラウ) やくわなどで土を起こして, 反転あるいは天地返しする作業です. 多くの場合, 耕起に先立って, 堆肥や石灰質肥料などの土壌改良資材を散布して, 一緒に鋤き込みます. 耕起の効果としては, 有機質の分解や土壌微生物の繁殖を促し, 通気性や保水性を高めることが挙げられます

5.2 砕土・整地

砕土・整地とは, 土のかたまりを細かく砕き, 地面を平らにして, 播種や定植などを円滑に行えるようにする作業です

6. 施肥

耕地では, 農作物の収穫によって土壌養分が持ち去られてしまいます. そのため, 作物の生育を助けるための養分 = 肥料を施す作業が必要で, それが施肥です.

土壌の無機養分には, 窒素, リン酸, カリが主な三要素で, そのほかに微量要素が必要になります. 肥料が少なすぎると生育不良になりますが, 逆に肥料が多すぎても, 過繁茂, 倒伏, 病害虫の多発などをまねき, 収量が低下します.

6.1 施肥の種類 (1) 時期

  • 元肥・・・播種や定植前に施す. ゆっくり分解して吸収される堆肥や, 緩効性肥料, 土壌に浸透しにくいリン酸肥などを主体にします.
  • 追肥・・・播種や定植後に施す. 吸収され易い肥料を, 作物の生育に応じて数回施します

6.2 施肥の種類 (2) 施し方

  • 全層施肥・・・田畑の表面に施してから作土全体に混和する
  • 表層施肥・・・土壌表層に施す

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  • 葉面散布・・・葉の表面に養分を含む薄い水溶液を散布し, 葉から養分を吸収させる方法. 肥料を即効的に使用したい場合や, 根が弱っている場合などに用いられます

7. うね立て

7.1 うね立て

うね立てとは, 播種あるいは定植 (移植) のためのうねを立てること. うね切りとも言います. うねは, 表土が乾燥し易い畑では低くし, 加湿になりやすい畑では高くするのはふつうです. 傾斜のある畑では, 土壌の流亡を防ぐために, ふつう傾斜に対し直角方向にうねを立てます.

うね立て後には, プラスチックフィルムやわらなどでマルチング (うね面をおおうこと) をおこなうことがあります

7.2 マルチング

7.2.1 マルチングの効果

マルチングの効果は以下の通りです.

  • 地温を高めたり, 抑えたりする
  • 土の乾燥を防ぐ
  • 雑草の発生を抑える
  • 肥料の流亡を防ぐ
  • 作物の汚れや病気の伝染を防ぐ

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7.2.2 マルチング素材

マルチングの素材には, プラスチックのフィルムが使われることもあります. プラスチックのフィルムには, 透明, 黒, シルバーなどの種類があり, 使用目的に合わせて使い分けられます.

8. 播種, 移植・定植

種を播くことを播種といいます. これには, 点まき (点播 (てんぱ)), すじまき (条播 (じょうは)), ばらまき (散播 (さんぱ)) などの方法があります.

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播種の密度は, 作物の種類や品種によって異なります. しかし, 一般的には, 密よりも疎の方が望ましい (ただし, 発芽後しばらくは, あるていど混み合っていた方が生育のよい作物もあります). 

播種の後, 土をかけることを覆土, かるくおさえることを鎮圧といいます. 種をまき, 覆土をし, 鎮圧をすることは, 発芽に適した環境をつくるための作業です. 覆土は, 種子の 2 〜 3 倍くらいがふつうですが, 好光性種子では, 覆土はごくごく薄くにするか, もしくは行いません.

移植栽培では, 苗が一定の大きさになると, 必要に応じて数回の移植を行います. その後, 田畑へ定植します. 移植・定植の際に気を付けなければならないのは, 根を傷めるなどのストレスを与えないことです. また, 適切な栽植密度の確保も重要です.

9. 栄養成長期の管理

直播栽培では, 生育が進むにつれて, 茎葉の混み合いを防ぐための間引きや中耕, 雑草の除去, 追肥, 土寄せなどを行います. 病害虫の防除は, 発生状況をよく観察して適期防除を心掛けるようにします. また, 土壌の乾燥状態をみながら, 適量の潅水を行います. 

一般の畑土壌では, 土壌の最大容水量の 50 〜 60 % のときに植物や微生物の活動が最も活発です. ですので, 過剰な潅水は避けなければなりません. また, 手で触ってみて非常に冷たい水や, 逆にホース中に残っていて太陽光によって温められた熱水は, 植物の根や茎葉を傷めるので, 用いないように気を付けなければなりません.

9.1 果菜類でのポイント

トマトやキュウリなど, 果実を利用する野菜を果菜類といいます. 果菜類では, 採光や通風をよくするために, 生育につれて支柱立てや誘引, 適葉などの作業を行います.

10. 生殖成長期の管理

生殖成長期には, 生殖器官が発達し, 受粉・受精・結実が行われ, 果実や種子へ多くの光合成産物が送られるようにする必要があります. そのために必要なのが, 茎葉や根を大切にすること, 養水分が不足しないよう適度に灌水・施肥をすることです. 

たとえば, 養水分に注目すれば, 生殖成長期後半での過剰な養水分は, 果実や種子の品質を低下させることがあります. メロンでは糖度を高めるために, 乾燥状態で管理する「水切り」が行われます.

また, 採光や通風を工夫することも大切です.

10.1 果菜類でのポイント

果菜類は生殖成長をしながら栄養成長も行うために, 細かな管理技術が必要です. 例えば, 葉腋から出た芽を取り除く芽かき, 茎の先端部を摘み取る摘芯, 茎の数や配置を調整する整枝, よぶんな果実を摘み取る摘果などです.

これらの管理技術は, 栄養成長と生殖成長のバランスをとり, 光合成産物の効率的な利用がおもな狙いです.

参考文献

  • 生井・上松・相馬『新版 農業の基礎』(農文協, 2003)

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