生物学の教科書には, 光合成曲線が載っています. これは, 光や CO2 濃度を変化させたとき, 光合成速度がどのように変化したかを示したものです.
光合成速度の単位は, CO2 μmol・m^(-2)・s^(-1) で, これは, 1 ㎡ の葉が 1 秒間に何分子の CO2 を吸収したか, という意味です.
光合成速度は光合成能力を評価するうえで非常に重要です. しかし, 光合成速度の単位の分母に当たる, 葉面積や光が照射されている時間は, 植物の大きさや季節によって大きく異なります.
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実際の栽培で重要なのは光合成量
たとえば, 同じ光合成速度と葉面積をもつ植物であっても, 一方の植物は 8 時間日長, もう一方は 16 時間日長であれば, 光合成量 (CO2 μmol/個体) は後者の方が多くなります. 逆に, 日長が同じであっても, 葉面積が違えば, 個体あたりの光合成も違ってきます.
たとえばヒマワリの場合. 根域温度 20 ℃ と 30 ℃ で栽培するとでは, 光合成速度はほとんど変化しません. しかし, 30 ℃で栽培すると葉の水ポテンシャルが高く維持され, 葉面積が大きくなります. そのため, 個体当たりの光合成量に徐々に違いが現れ, 結果, 最終的な乾物重が増加します.
このように, 個体の光合成量は光合成速度, 葉面積と光合成が行われた時間の「積」によって決定されるのです.
光合成の評価
しかし, 葉の面積や光が照射されている時間, 実際栽培では受光体制もふくめて, 栽培期間中の光合成量をいかに多くするのかという視点が重要です.
栽培管理の事例: 補光
光合成に必要な光を補うことを補光といいます. 早朝や夕方など, 光強度が弱いときや, 悪天候時に行われます.
たとえば日射量が少ないオランダなどでは, 高圧ナトリウムランプ (high pressure sodium lamp) などを用いた補光が一般的に行われています.
ただ, 高圧ナトリウムランプは消費電力量が多い, 現在では, 省エネルギー型の高輝度発光ダイオード (LED; light-emitting diode) 利用の研究・開発がさかんに行われています.