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siRNA と miRNA

植物を形質転換し、外来の遺伝子を発現させる技術を、遺伝子組み換え植物と言います。遺伝子組み換えの際、既に植物が持っている遺伝子を導入した場合、導入した遺伝子と内在性遺伝子の両方の発現が抑制する場合があります。

 

[目次]

 

siRNA

導入した遺伝子と内在性遺伝子の両方の発現が抑制する現象は、コサプレッションと呼ばれています。ジーンサイレンシングでは、二本鎖 RNA が重要な役割を果たしています。外来遺伝子の mRNA の一部が二本鎖を形成すると、RNA 依存性 RNA ポリメラーゼにより二本鎖 RNA が合成されます。二本鎖 RNA は細胞内のヌクレアーゼにより 21 〜 25 ヌクレオチドに断片化されます。この短い二本鎖 RNA を siRNA と呼びます。siRNA は RISC 複合体に取り込まれて一本鎖になり、それがガイドとなって標的 mRNA の特異的な分解または翻訳阻害が起こります。

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この 二本鎖 RNAを介した転写を抑制はアカパンカビ、線虫、マウスなど真核生物に広く見られる現象です。植物と線虫では、短い RNA をプライマーとして RNA 依存的 RNA ポリメラーゼにより二本鎖 RNA の増幅が見られます。植物では、転写後のジーレンシングのメカニズムは二本鎖 RNA を中間体として増殖するウィルスに対する防御機構として進化したと考えられています。このメカニズムを応用して、特定の mRNA と同じ配列を持つ短い二本鎖 RNA を細胞や個体に導入するかまたは発現させることで、その mRNA の機能を特異的に抑制することができます。

siRNA は転写を抑制することもあります。Pol 5 により転写された RNA が siRNA をガイドとして認識されると、メチル化酵素により標的 RNA をコードするゲノム DNA がメチル化されます(RNA 依存的 DNA メチル化)。このメカニズムによりトランスポゾンなどの転写が抑制されます(転写レベルでのジーンサイレンシング)。

miRNA

RNA の包括的解析から siRNA に似たヘアピン構造を持つ短い RNA が細胞内に多数存在することが明らかになりました。これらはゲノムの特定の領域から転写されたもので、タンパク質に翻訳されることもない RNA で、micro RNA (miRNA) と呼ばれます。

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​miRNA はその配列と相補的な mRNA と結合し、その mRNA の分解または翻訳を阻害する遺伝子発現の負の制御因子として機能しています。miRNA は翻訳される事はない機能性 RNA と言うことができますね。

miRNA と siRNA はよく似ていますが、合成経路が異なります。二本鎖 RNA に由来するsiRNA に対し、miRNA はゲノムにコードされる非コード RNA 中の一本鎖 RNA のヘアピン構造が切り出されて成熟型になります。

 


 

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