ロゼットとは, 宿根草にみられる休眠に似た現象です. 茎がほとんど伸びずに, 生育が停止しているように見えますが, 茎頂では葉の分化を続けている状態のことを言います. ロゼットという名称は, 上から見た形がバラの花形 = rosette に似ていることに由来します. ロゼット形成の誘導や打破は, 休眠と類似しています. ロゼットは, 不良環境耐性を得るための生理的な防御機構だと考えられています.
【目次】
1. ロゼットの誘導
ロゼットは, 夏の高温や秋の短日で誘導されます.
一年草では, トルコギキョウが夏の高温でロゼットが誘導され, 種子が吸水してから本葉が2対展開するまでに高温に遭うと, 幼苗がロゼットになります. カスミソウは秋の短日でロゼットが誘導されます.
宿根草のマーガレット, ミヤコワスレ, キクなどは, 吸枝 (sucker) や下位の腋芽がロゼットになりますが, 夏の高温で生理的に誘導され, 秋の涼温と短日で形態的に形成されます. デルフィウム・エラツムは, 秋の短日でロゼットが誘導されます.
2. ロゼットの制御
ロゼットの制御には, その打破, 防止, 促進があります.
2.1 ロゼットの打破
夏の高温や秋の短日でロゼット形成された植物は, 一定期間の低音処理でロゼットを打破できます.
2.2 ロゼットの防止
夏の高温で生理的なロゼット形成が誘導される植物は, 秋に高温を維持するか, 長日処理や低温処理で制御できます.
2.3 ロゼットの促進
キクでは, 夏の高温時にエテホンを処理することで, 腋芽のロゼット形成を促進できます. この腋芽を挿し芽して, 一定期間の低温処理でロゼット打破すれば, 低温時の開花が可能になります.
トルコギキョウでは播種後, 高温育苗して人為的にロゼット苗をつくり, その後一定期間の低温処理でロゼットを打破すれば, 一斉開花が可能になります.