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遺伝子の相互作用

遺伝現象は、いつも単純な 3 : 1 のメンデル比を示すとは限りません。表現型の発現は、実際にはさまざまな要因から影響を受けます。たとえば植物に対する温度や光などの外的な環境条件、あるいはホルモンや酵素などの内的な環境条件です。また、遺伝子間の相互作用によっても、メンデルの単純な法則にあてはまらない例が多く知られています。このような遺伝子の相互作用によるいろいろな遺伝の在り方について、1 つの遺伝子座における対立遺伝子間の場合と、2種類の遺伝子座間の場合の 2 通りについてみてみましょう。なお、遺伝子座とは、染色体やゲノム上の遺伝子の位置のことです。対立遺伝子どうしの遺伝子座は同一です。

[目次]

対立遺伝子間の相互作用

不完全優性

例として、オシロイバナの花の色の遺伝が挙げられます。赤色 AA と白色 aa を交雑した F1 は、両親の中間の桃色 Aa になります。F2 では、赤色 AA : 桃色 Aa : 白色 aa = 1 : 2 : 1 の比に分離しました。これは、対立遺伝子に完全な優性、劣性の関係がなく、遺伝子型 Aaヘテロ個体では、両者の中間の形質が発現していることを意味します。通常、優性の法則では、優性遺伝子は正常に機能しますが、劣性遺伝子は機能しないので遺伝子産物はみられません。完全優性の場合には、 ヘテロ個体では優性遺伝子が機能し補償するので、正常な表現型を示すのに充分です。これに対し、優性遺伝子が十分補償しきれない場合に不完全優性になります。その雑種は中間雑種とよばれます。しかし、F2 では両親型が分離するので、分離の法則には従います。

超優性

遺伝子型 Aa のへテロ個体が、AA および aa のホモ個体の範囲を超える形質を示す現象です。たとえば両親の草たけや穂の長さを超える場合です。超優性は、雑種強勢を説明する理由の 1 つになっています。

共優性

両親がそれぞれ別の形質を示し、F1 におけるヘテロ個体でその両方の形質が現れること。この場合、対立遺伝子は両方とも完全に発現します。

複対立遺伝子

これまで 1 つの遺伝子座に 2 つの対立遺伝子が存在する場合だけを考えてきました。しかし実際には 3 つ以上存在することもあります。同一の遺伝子座に突然変異が何度も起こり、何種類もの対立遺伝子が位置するようになったのです。これを複対立遺伝子といいます。花の青素着色に関する遺伝子や、他家受精植物において自家受精を抑制している自家不和合性に関する遺伝子では、同じ遺伝子座に多くの複対立遺伝子が報告されています。

非対立遺伝子間の相互作用

別々の遺伝子座にある2つの遺伝子の間で相互作用がはたらき、両座の対立遺伝子の組合せによる遺伝子型から考えられる表現型が異なる場合、非対立遺伝子間の相互作用と言います。これは、二遺伝子雑種の F2 での 9 : 3 : 3 : 1 の基本分離比からずれることによって検出されます。AaBb の 2 組の対立遺伝子による相互作用には、次の 6種類あります。

優性上位

一方の優性遺伝子 A が、ほかの優性 B あるいは劣性 b 遺伝子の作用を覆い隠す場合。AABBAaBBAaBb が、すべて AAbbAabb と同じ表現型になります。F2 の分離比は 12 : 3 : 1 です。例えば、カボチャの果皮の色を支配する遺伝子には、WY があり、白色 (WWYY) と緑色 (wwyy) を交雑すると、F1 はすべて白色 (WwYy) になりますが、F2 では白色 (W-Y-W-yy)、黄色、黄色 (wwYy)、緑色 (wwyy) が 12 : 3 : 1 の分離比になります (「-」の記号は、遺伝子型において、優劣どちらの遺伝子でもかまわないことを表します)。Yy は、それぞれ黄色と緑色の形質を発現しますが、優性遺伝子 W は、Yy のはたらきを抑えて発色させません。この場合、色素ができないので白色になるのです。

劣性上位

一方の劣性遺伝子 a が、他方の優性 B あるいは劣性遺伝子 b の作用を覆い隠す場合。aaBBaaBb および aabb が同じ表現型になります。そのため、F2 の分離比は 9 : 3 : 4 になります。タマネギのりん茎の色の遺伝がこの例です。黄色 (CCrr) と白色 (ccRR) の F1 は赤色 (CcRr) になり、F2 では赤 (C-R-) : 黄 (C-rr) : 白 (ccR-ccrr) が 9 : 3 : 4 で分離します。c は劣性遺伝子なのですが、優性遺伝子 R の発現をおさえてしまうのです。この場合、cR に対して劣性上位です。2 組の対立遺伝子のうち、C は単独に黄色の形質を発現しますが、RC が共存するときだけ、赤色の形質を発現するという条件遺伝子です。

補足遺伝子

ある形質の発現に対して、2 組の遺伝子が互いに補足しあう場合。AAbbAabbaaBBaaBb がすべて aabb と同じ表現型になりますので、F2 の分離比は 9 : 7 です。色素の合成のように、各々の遺伝子が一連の生化学的反応に関与していると考えられていて、どちらか一方が突然変異を起こせばその反応は止まってしまいます。スイートピーの白花の、異なる 2系統 CCppccPP を交雑すると、F1 はすべて紫花 (ccpp) となり、F2 では紫花 (C-P-) と白花 (C-ppccP-ccpp)が 9 : 7 で分離します。

重複遺伝子

2 組の遺伝子が同一の形質に関係している場合。劣性形質を示すものは aabb だけなので、F2 では 15 : 1 に分離します。ナズナの果実の形にはうちわ型 (T1T1T2T2) とやり型 (t1t1t2t2) があり、F1 はすべてうちわ型 (T1t1T2t2) ですが、F2 はうちわ型 (T1-T2-) とやり型 (t1t1t2t2) が 15:1 で分離します。

相加遺伝子

同じ形質を支配する遺伝子 AB があり、両者が共存すると効果が加算される場合。AAbbAabbaaBBaaBb が同じ表現型になります。F2 では 9 : 6 : 1 の分離をします。AB の遺伝子は相互に等位にあるいいます。例えばイネの芒の長さで、これを支配する遺伝子は 2 種類ありますが、異なる短芒系統 (An1An1an2an2 と an1an1An2An2) を交雑すると、F1 はすべて長芒 (An1an1An2an2) になり、F2 は長芒 (An1-An2-) : 短芒 (An1-an2an2、an1an1An2-) : 無芒 (an1an1an2an2) = 9 : 6 : 1 に分離します。

抑制遺伝子

ある形質を発現する遺伝子に作用して、その形質発現を抑制する遺伝子による場合。aaBBaaBb を除いて、すべて aabb と同じ表現型になるので、F2 の分離比は 13 : 3 になります。タマネギのりん茎の色の遺伝で、優性の抑制遺伝子 I は有色の優性形質 C の発現を抑えて、白色のタマネギになります。白色 (IIcc) と有色 (iiCC) の F1 はすべて白色 (IiCc) で、F2で は白色 (I-C-, I-cc, iicc) と有色 (iiC-) が 13 : 3 で分離します。

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