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育種素材の収集と保存: ジーンバンクとは?

新たな特性を持つ種苗を育成するためには、その特性について世代を経ても確実に伝わる差異 (遺伝変異) が必要です。このような遺伝子によって影響するのが育種素材です。

[目次]

 

育種素材として利用可能な多くの品種や系統を保存する施設を、遺伝資源保存施設あるいはジーンバンクといいます。ジーンバンクのような機関で行われる遺伝資源保存事業は、遺伝資源の探索・導入・保存・評価・記録・情報化・利用の順に進められます。ジーンバンクには多数の植物を保・管理する農業生物資源ジーンバンクなどの総合施設や、特定植物グループを取り扱う専門施設があります。

ジーンバンクでは災害などによる損失を防ぐために、遺伝資源を異なる施設に重複して保存することが通常行われます。たとえば、たとえば、農林水産省や米国農務省には重複保存を専門に担当する機関があります。世界中のジーンバンクに保存されている点数は作物によって大きく異なっています。重要な作物は多く保存されますが、同時にに収集、保存が容易なほど保存数が多い傾向があります。

種子の保存

保存の主な対象になる植物の部位で最も多いのが種子です。発芽の良い健全な種子を通常、低湿度かつ低温で保存します。温湿度の条件は、極長期保存の場合は -10 〜 -30 ℃、配布用の種子の場合は 0 ℃ 〜 室温が一般的で、いずれの場合も、水分管理 (穀物では乾燥) がより重要です。通常は温度の低い方が長期に保存できますが、低温にするほど費用がかかるので保存に必要な年月によって条件を変えます。保存中、発芽能力を確認するために定期的に発芽試験や採取栽培を行います。一般にマメ類などのタンパク質や脂肪を蓄える種子は、イネ、コムギなどのデンプン種子より寿命が短いとされます。

ex situ conservation と in situ conservation

ジーンバンクは、保存する植物の生育している環境から持ち出すので、ex situ conservation (生息域外保存) と言われます。ジーンバンクで保存している種苗を栽培すれば、育成品種はその特性を再現できます。しかし、多くの遺伝変異を含む在来品種や、多年生の野生種などの場合には、ジーンバンクで保存している種苗に遺伝変異全体の一部しか含まれないことがあります。さらに、保存の難しい大型の植物や大規模な自生地などはそのままの状態で遺伝資源を確保するのが効率的な場合があります。このような自然状態での遺伝資源の保存方法を in situ conservation (生息域内保存) と言って、野生イネや材木などで使われています

コアコレクション

世界中のジーンバンクで保存されている作物の点数は膨大です。通常そのすべての特性を同一の条件で評価することは不可能です。これらの遺伝子資源の遺伝変異をなるべく少ない系統で最大限に含むように選抜して、遺伝資源の大まかな情報を得るために作成された系統のグループをコアコレクションといいます。コアコレクションは作物別に作られていますが、近縁の野生植物や実験用の系統を含む場合や、種や属を超えてつくられる場合もあります。コアコレクションを作る際には、同じような系統が重複することを避けるために、収集地、用途、生育条件等が違う系統を集めることが多く、遺伝変異の指標とするため DNA マーカーを使うこともあります。このようにして選ばれたコアコレクションは、一般的には数百 〜 数千程度の系統からなります。遺伝資源から目的とする形質に遺伝変異を得たい場合、まずコレクションが評価して目的とする形質の遺伝変異を確認し、望ましい特性を含む系統が得られたら、その系統の由来した地域や用途などの共通する遺伝資源のグループを評価することで、目的とする特性をもつ多くの系統を得ることができます。

オンライン・データシステム

ジーンバンクではそれぞれの品種や系統を、由来や基礎的な特性を記載したパスポートデータとともに管理することが一般的です。ただし、育種素材や遺伝学的な研究に使う場合にはさらに詳細な特性データがあることが望ましいと言えます。このような産業上あるいは研究上で必要な特性を調査してデータベースとして提供することは、遺伝資源の利用価値を高めるうえで重要です。特に保存する遺伝資源の系統数が多い場合には、データベース化されていれば、目的とする遺伝子資源を効率的に得ることができます。このため、規模の大きなジーンバンクではオンラインによる探索が可能なデータベースシステムを公開しているところもあります。

 


 

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