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転写制御と RNA ポリメラーゼ

遺伝情報の発現は様々なレベルで制御されています。転写開始、スプライシングを含む転写後修飾、mRNA の安定性、翻訳、タンパク質の修飾やソーティング、タンパク質の分解の過程などです。

[目次]

 

転写制御

遺伝情報の発現の主要な制御は、転写レベルで行われています。転写調節には DNA と DNA 結合タンパク質の特異的な結合、DNA 結合タンパク質と他の転写因子間の相互作用、さらにはこれらの転写因子と基本転写因子との相互作用が重要です。また、DNAのメチル化、ヌクレオソームを構成するヒストンの修飾状態も転写に大きな影響を与えます。個々の DNA 結合タンパク質は、1 つずつ別の遺伝子を制御しているのではなくて、発現する時期や組織の異なる多くの遺伝子の発現調節に重複して利用されています。したがって、ある転写因子の遺伝子の変異が生じると、その影響は1つの遺伝子の転写量の変化として現れるばかりではなく、思いもかけないような大きな変化を引き起こすこともあります。花のホメオティック変異のように、形態に異常を示す変異体の原因遺伝子は転写因子に属する場合が多く、転写の制御系は発生の細胞の分化にも深く関わっています。

転写装置 (RNA ポリメラーゼ)

真核生物の角内には、大きく分けて3種類のRNAポリメラーゼが存在します。RNA ポリメラーゼⅠはリボゾーム RNA、PolⅡは mRNA、PolⅢは tRNA の転写にそれぞれ関与しています。PolⅡによる転写は、組織や発生の各段階ごとに、あるいは外部環境の変化により、転写される遺伝子の種類も、量も大きく変動します。植物を含めた真核生物の PolⅡ には、12 個のサブユニットからなるものが多くあります。このうち3つのサブユニットは PolⅠ、PolⅢ と共有していることが知られています。ポリメラーゼ反応に直接関与すると考えられる最大のサブユニットの C 末端には、真核生物に共通する 7 アミノ酸を単位とする反復配列が存在しています (CTD: carboxyl terminal domain)。哺乳類では52回、シロイヌナズナでは40回の繰り返しが見られて、TFIIH 中のプロテインキザーゼにより、この繰り返し構造中のセリン残基がリン酸化され転写が開始すると考えられています。

植物には、このほかに PolⅣ、PolⅤ が存在して、siRNA 合成に関与しています。また、PolⅤ は RNA 依存的 DNA メチル化反応にも関与します。

基本転写因子

精製した PolⅡ を DNA、基質とともに試験管内で反応させても、転写は開始しません。転写開始には、PolⅡを補助するタンパク質群が必要です。これを基本転写因子といいます。基本転写因子のうち TFIID は、プロモーター上の TATA box と直接結合する TATA box 結合タンパク質 (TBP) と、それに付随するタンパク質群 ( TAFs ) によって構成されます。転写開始に必要な転写開始前複合体の形成は、この TFIID が TATA box に結合することから始まります。そして最後に、TFIIH 中のプロテインキナーゼにより、PolⅡの C 末端の繰り返し構造の中の 5 番目のセリフがリン酸化されると転写前複合体から解放されて mRNA の合成を開始します。TFIIH 内のキナーゼの実体は、Cdk7-CylinH と考えられています。

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PolⅡの一時停止

多くの遺伝子の転写において、PolⅡは転写開始後の 25 〜 50 塩基下流で一時停止していることが明らかになっています。

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例えば、熱ショック遺伝子においては遺伝子が発現していないときも、PolⅡが転写開始点近傍に一時停止した状態で存在しています。外部から熱刺激を受けると、転写伸長因子 P-TEFb により PolⅡ の繰り返し構造の中の 2 番目のセリンがリン酸化され、PolⅡの停止が解除されることで、熱ショック遺伝子が発現します。P-TEFb 内のキナーゼの実体は Cdk9-CylinT と考えられています。PolⅡの転写開始後の一時停止は迅速な遺伝子発現のための待機状態であると考えられています。

 


 

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