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遺伝をつかさどる物質

1866 年、メンデルが遺伝の法則の論文を発表しました。

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その 3 年後の1869 年、スイスの生化学者 F. ミーシャーが、膿から死んだ白血球細胞の核を集めてリンを多く含む物質を精製し、ヌクレインと名付けました。このヌクレインは現在、クロマチンと呼ばれる DNA とタンバク質の複合体です。ヌクレインは他の科学者らによってさらに精製され、酸性物質であることから核酸と名付けられました。化学的な違いから、核酸には DNA (デオキシリボ核酸)と RNA (リボ核酸) の 2 種類が存在します。

メンデルは、遺伝の要素が物理的な実体であることに気づいていたし、ミーシャーの方も、ヌクレインが細胞の重要な役割を果たしていると考えていたようです。

遺伝物質の化学的本体については、タンパク質なのか DNA なのかで意見が対立していましたが、当時はタンパク質の方が有力でした。遺伝物質を突き止めた最初の実験は、F. グリフィスによって行われた肺炎レンサ球菌の研究 (1928) でした。

肺炎レンサ球菌には、病気をおこす S 型と病気をおこさない R 型があります。病原性の S 型菌を加熱して殺したものをネズミに注射しても発病しませんが、R 型の菌と熱で殺した S 型の菌を同時に注射した場合には、発病した S 型の性質を決めていた物質が S 型菌の死後も残り、それが R 型の菌に移ってその性質を発現させました。このことは、非病原性菌から病原性菌へ形質転換したことを示した最初の例です。1944 年、O. アベリーのグループが、この形質転換をおこさせる物質が DNA であることを突き止めました。

その後、A. ハーシーと M. チェイスが、バクテリオファージを用いた実験によって、遺伝物質がタンパク質でなくDNAであることを決定的に証明しました (1952)。

ファージは DNA とそれをおおう外被タンバク質から構成さています。両者の重量比はほぼ同じです。DNAはリン (P) を含みますが、硫黄 (S) を含みません。タンパク質はその逆です。ハーシーとチェイスは、ファージの DNA を放射性同位元素である 32P で、外被タンパク質を 35S で標識しました。このファージを大腸菌に感染させたところ、S の放射能は、菌体の外側に残りました。培養を続けると大腸菌内でファージが増殖し、多数の子ファージが放出され、その一部にも P の放射能が検出されました。このことから、DNA だけが菌体内に入り、遺伝物質としてはたらくことが明らかになりました。

このように、大腸菌を宿主とするファージをモデル生物として多くの実験が行われ、分子生物学が大きく発展しました。

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