いちおう、哲学の修士号は持っているので、フェミニズムというものがどういうものなのか、ぼんやりは理解していたつもりでした。ただ、ちょっと、いま、ここ 2 〜 3 日勉強したなかで気づいたのが、つい数年前まで私のとっていた態度が、ポストフェミニズム的なものだったということに気付きました。要するにわたしは、フェミニズムがどんなものなのか、理解していなかったのです。
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わたしは性別は男だし、異性愛者なので、本当にステレオタイプな「男」であることを自覚しています (本当にそうか?)。だから、フェミニストによる、現在・現代にはまだまだ女性差別が存在するといったような主張を「言いがかりだ」的にしか思っていませんでした。2000 年代以降「女性差別が存在するなんていうのは言いがかりだ」といったようなわたしの考えが完全に誤りだと気付かされたのは、東京医科大学による不正入試が明らかになってからでした。「そんな前時代的な女性差別が、テン年代に存在するなんて…」。「女性差別の存在なんてフェミニストの言いがかりだ」というわたしの思い込みは、音を立てて崩れ去りました。
それから、徐々に、存在する女性差別、女性問題が、わたしの目に立ち上がるように見えてくるようになりました。
男は女を決して理解できない… けど… / だからこそ...
女性差別問題を認識していくなかで、はたと気付いたのが、男性と女性とではまったく考え方が異なるのではないか、ということでした。男性はおそらく、女性の考えていることを、決定的には理解しない… 男性と女性とでは、違う論理が働いている… 男性にとって矛盾していることが、女性にとってはスジが通っているということが多々あるのではないか…
女性の考えていることは一体何なのか… 男性であるわたしが決して理解しないであろう、女性の持つ考え方とは…
こういったことを思うようになるにつれ、フェミニズムへの関心が高まるようになりました。フェミニズムに関心を持てなかったのは、フェミニズムの理論が、けっきょくは哲学に依拠し、フェミニズムは哲学のサブジャンルだろうくらいにしか思っていなかったというのもあります。しかし、そうではないのであれば… 一体どういった論理が、フェミニズムには働いているのか…
こういった動機から、フェミニズムの勉強をしてみようと思うようになりました。
近年の、Twitter 発祥の #MeToo 運動なんかも、影響していると思います。それからもちろん、単に知的関心を満たすためだけでなく、フェミニズムの考えにふれることで、男性であるわたしの行動を、女性差別の内容な行動へ変容させたいとも思っています。
では、フェミニズムを勉強するにあたり、一体、どういった教材を選べばよいのでしょうか。
わたしの関心のあるのは、けっきょくはフェミニズム「理論」の方なので、割と哲学方面に近い教科書があればありがたい。ということで、何冊か本を借りてみました。
フェミニズム初学者にオススメの動画
が、そういった本をいきなり読むのではなく、現代です、インターネットです、YouTube です、ということで、動画で見られるフェミニズム入門的なものを探してみました。YouTube で「フェミニズム」「上野千鶴子」といったワードで検索しても、なかなかマトモな動画が見つかりません。#MeToo 以降、フェミニズムは「ブーム」だとわたしは認識していて、そういった点で、ネット論客的なフェミニストは自称・他称を含めてけっこう玉石混淆、そして魑魅魍魎です。
そのなかでも、これは専門的なお話を聞けるのではないか、というオススメを紹介します。
(「平成とは何だったのか」(18)女性と社会~何が変わり、何が変わらなかったか~ 樋口恵子・評論家 2019.4.02)
この樋口恵子氏の記者会見動画は、日本における女性問題の戦後史的な内容を、ものすごくわかりやすくまとめられています。
それから、日本を代表するフェミニスト、上野千鶴子の講義動画などがみられるチャンネル。
こういった講義動画・講演動画を見て分かったのは、上野千鶴子って、発言内容は過激なところはあるかもしれませんが、語り口がすごく優しいということですね。ゼミ動画で学生に語りかけるところなんて、本当に優しい語り口…
もちろん、上野千鶴子の言葉にはグサグサ刺さるものもあるんですが…
フェミニズム初学者にオススメの本
数冊図書館で借りたんですが、これといって、パキっとはまる本が、いまのところ見つかっていませんね。
この 2 冊は体系的にまとめられていますが、いかんせん、20 年以上前ということで、テン年代に教科書にするにはどうなのかな、と思うところがあります。新書だと携行しやすくていいんですけどね。『ワードマップ フェミニズム』の方もソフトカバーで持ち歩きやすいし。
- 高橋幸『もうフェミニズムはいらない』(晃陽書房、2020)
新しいだろうということで借りてみた『もうフェミニズムはいらない』ですが、ポストフェミニズムの入門書で、興味深い内容ではありますが、体系的な教科書とはあまり言えないですね。
体系的な教科書、という考え方自体が男性的なのかもしれません…
こちらも新しいので借りたのですが、フェミニズムという項目はありませんでした。
ということで、本の方はまだまだ探し中です。岩波の「新編 日本のフェミニズム」シリーズで興味のある巻を読んだ方がいいかもですね。
それから、入門者向けの教科書ではないと思いますが、上記の動画を観ていて、上野千鶴子の
あたりは読まないといけないな、と思いました。
- エヴァ・フェバー・キティ『愛の労働あるいは依存とケアの正義論』(2010)
も面白そうです。
最近のインターネット発祥のフェミニズム・ムーブメントをまとめた本とか論文とかあれば、それも読んでみたい。
それから、ネオリベについてもオベンキョしないとですね。