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植物における細胞内情報伝達機構

多細胞生物は、細胞分化、生長や細胞分裂を個体レベルで統合して制御しなくてはいけません。そのために複雑な情報伝達機構を発達させてきました。まず、哺乳類を中心として明らかにされた真核生物の情報伝達を見てみましょう。

[目次]

 

動物・酵母の信号伝達系の特徴

細胞内情報伝達では、受容体、三量体型 GTP 結合タンパク質、低分子量 GTP 結合タンパク質、タンパク質リン酸化酵素、アダプターなどに重要な役割があります。細胞が情報分子を受容すると、何段階かのタンパク質リン酸化反応を経て最終的に核内の転写因子がリン酸化により活性化または不活化され、遺伝子発現のパターンが変更される場合が多いです。例えば、哺乳類の表皮生長因子 (EGF) の受容体はチロシンキナーゼ活性を持っていて、リガンドと結合すると自分自身のチロシン残基のリン酸化とアダプター分子を介して、低分子量 GTP 結合タンパク質 Ras の GDP型 から GTP 型への変換を促進します。

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GTP 型 Ras は MAP キナーゼカスケードを活性化します。MAPK は転写因子などをリン酸化し遺伝子発現のパターンを変更します。チロシンキナーゼ活性を持たない受容体はしばしば、7 回の膜貫通領域を持っていて、ヘテロ三量体型 GTP 結合タンパク質を活性化します。

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活性化されたヘテロ三量体型 GTP 結合タンパク質は、解離してアデニル酸シクラーゼやホスホリパーゼ C などのエフェクターを活性化します。アデニル酸シクラーゼは cAMP を構成します。cAMP によって活性化されるプロテインキナーゼ A(A-キナーゼ) は、転写調節因子 CREB をリン酸化した新たな遺伝子発現を誘導します。ホスホリパーゼ C はイノシトール三リン酸とジアシルグリセロールを生成します。イノシトール三リン酸はカルシウム貯蔵器官から Ca2+ を放出させます。Ca2+ は Ca2+ / カルモジュリン依存性プロテインキナーゼとプロテインキナーゼ C (C-キナーゼ) を活性化します。ステロイドホルモンなどの受容体は核に存在する転写制御因子で、リガンドと結合すると抑制型から活性型へ転換し、標的遺伝子の転写を促進します。これらの情報伝達系は一筋縄ではなく、相互作用しているだけでなく、ネットワークを細胞の種類ごとに異なります。

植物の信号伝達系の特徴

信号伝達系における、植物と動物の違い

植物の信号伝達においても MAPK や低分子 GTP 結合タンパク質などは同様の機能を担っています。情報伝達をする個々のタンパク質には、動物と植物で共通性がみられます。もちろん、動物・酵母と、植物とでは信号伝達の仕組みが異なる部分もあります。

たとえば、チロシンキナーゼですが、信号伝達において、動物では多くのチロシンキナーゼが重要な役割を果たしています。対して、植物には少数のチロシンキナーゼしか存在しません。

また、ヘテロ三量体型 GTP 結合タンパク質と共役する 7 回膜貫通型受容体の数は、動物では 1,000 を超え、最大の受容体ファミリーを構成しています。対して、シロイヌナズナには数十程度しか存在しません。

ヘテロ三量体型 GTP 結合タンパク質の作用機構も、動物と植物では異なります。植物では現在のところ、酵母や動物のように刺激によってヘテロ三量体型 GTP 結合タンパク質が解離し、エフェクターを活性化する機構の存在は確認されていません。

cAMP は動物や酵母では細胞内セカンドメッセンジャーとして顕著な生理活性を示します。一方、植物では作用は認められていません。

Ca2+ は、植物においても重要なセカンドメッセンジャーですが、Ca2+ によって活性化する植物の主要なキナーゼは、Ca2+ 依存性タンパク質リン酸化酵素 (CDPK) です。CDPK は、Ca2+ と直接結合して活性化されるキナーゼで、植物と一部の原生動物にのみ見いだされています。

植物にもステロイドホルモンの受容体が存在します。しかし核タンパク質ではなく細胞膜に結合しています。

二成分制御系

植物では、二成分制御系 (two component system) がサイトカイニンの信号伝達によって大きな役割を果たしています。二成分制御系は、自己リン酸化能を持つ環境センサーキナーゼとレスポンスレギュレーター間のリン酸リレー反応により成り立っています。この信号伝達系は動物では全く見出されていません。

オーキシンの信号伝達抑制因子として同定された AUX/IAA タンパク質は、オーキシンの刺激を受けるとポリユビキチン化され分解されます。これに似た仕組みは、ジベレリン、ジャスモン酸、ストリゴラクトンの信号伝達にも認められます。

 

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抑制因子を 26S プロテアソーム系で分解し、信号を伝達する様式は、植物が進化の過程で発達させたと考えられています。

植物の細胞質は原形質連絡 (プラスモデスム、プラスモデスマータ) によって連続しています。mRNA やタンパク質などの高分子も原形質連絡を通って細胞間を移動します。根毛分化では転写因子が隣接する細胞に移動して細胞分化に影響与えます。花成ホルモンの実態である FT (Flowering Locus T) は広義の転写因子で、日蝶が変化すると葉の細胞から茎頂の細胞に移動して花成を引き起こします。 

このような機構は他の多細胞生物には見られません。

 


 

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