4 年前, 農学部に再入学したのですが,
無事, 卒業することができました.
卒業に際して, 卒業式後の後援会主催のパーティー = 祝賀会にて, 卒業生を代表しての謝辞を仰せ付かりました. 本記事で, その謝辞の原稿 (一部改変) を公開します.
本日は, このような盛大な会を開いていただき, 後援会の皆様方, そして教職員の皆様方に, 厚く御礼を申し上げたいところなんですが, 1 つだけ, 気になることがございまして...
農学部最後, 平成最後という記念すべき節目の祝賀会で、謝辞を申し上げるのが, わたくしのようなおっさんで大丈夫なのでしょうか.
もう少しフレッシュな人選の方が良かったのではないでしょうか. そういった点が気になるところではあるんですが.
どういうわけか, おっさんに白羽の矢が立ってしまいまして. 白羽の矢を立てる側もですね, 手元がお狂いになられたのか, あるいはおっさんを狙ったのか, 定かではございませんが, せっかく, いま立っていますので, おっさんらしい謝辞を, 僭越ながら申し上げさせていただきます.
そもそもなぜわたしがこんなにもおっさんなのかと申し上げますと, ご存知の方の方が多いかと思いますが, 県外の大学をすでに出ておりまして, そのときの専攻は, 文学部哲学科でした. 卒業後に, しばらく県外で遊んで, 遊ぶのにも飽きたな〜, と思って, 地元, 高知県に帰ってきました. 実家が農家で, 高知県の特産花卉, グロリオーサを栽培しているのですが, 農業をしようと, そう思い立ったわけです. しかし, ただなんとなく農業をしても面白くないな, と考え, 農学部で勉強してみよう, と思いつき, 入学しました. 入学後は暖地農学コースに進み, 卒論は花卉園芸学研究室で指導いただきました.
入学後, 周りから, 農学部に行っても意味ないよ, 実践的じゃないし行く必要ないよ? なんて言われることもありました. 私自身, そういった思いを全く持たなかったと言えば, 嘘になります. しかし, 4 年間, 農学部で過ごして, 農業に取り組むにあたり, 農学部で学べて, 本当に意味があったな, とそう確信しています.
農学部の 4 年間で学んだことは, 農業は, 知の, 知識の総力戦だということです. 生き物を扱います. 植物を中心とした, 生物学の知識が, まず第一になくてはなりません. 植物だけ知っていればいいわけではありません. 病害虫と上手に付き合っていくためには, 虫, そしてウィルスや細菌, 糸状菌といった微生物についての知識もなくてはなりません. 農薬・肥料を取り扱います. 化学の知識も必要です. そもそも農業は土地がなければ成立しません. 土壌学の知識も欠かせません. 土地を別の観点からとらえると, 農学部で言うところの流域環境学の分野も関わってきます. 環境という面では, 気象, 天気の分野は, 農業の本質に, 密接に関わっています. ただ作るだけでなく, 売らなければなりません. 経済・経営といった, 社会科学系の分野もなくてはなりません.
このように, 農業は, ありとあらゆる知識を総動員して取り組むという意味で, 非常に醍醐味のある, とてもやりがいのある営みなのだ, ということを学べたのが, 農学部での 4 年間でした.
わたしが幾分, 農業側の人間ですので, 森林や海洋の分野についての言及がどうしても少なくなってしまい恐縮です. 集中講義ではありますが, 演習林にも行きましたし, 宇佐の研究施設にも行きました. そこでは, 図書館で本を読むだけではない, 実践的な知の在り方を目の当たりにしました. それはとても鮮烈な体験でした.
このような意味で, 農学部での 4 年間は, とても知的興奮に満ち溢れた 4 年間でした. もう本当に, 4 年間, 興奮し放しでした.
4 年間, 興奮し続けられたのは, わたしのようなおっさんの相手をしてくれた, 同級生, 先輩, 後輩のおかげです. 本当にありがとうございます. わたしのようなおっさんがいることで, 特にグループワークなどで, やりにくい思いをされた方もいらっしゃるかもしれません. わたしもやりにくかったです. この点につきましては, もう卒業なので水に流してください. ごめんなさい.
しかし, 大学 4 年間, あるいは修士を入れれば 6 年間という時間は, 水に流せるものではありません. 大学 4 年間は, この場にいる私以外の卒業生・修了生にとって, 初めて経験する正真正銘の, 強烈な,「自由」という名の 4 年間だったはずです. このような自由を私たちにお許しいただいた保護者の皆様方には, 感謝しても仕切れない思いでいっぱいです.
卒業後, 私たちは, それぞれの道を歩み始めることになります. わたしの場合は, 高知の農業, 日本の農業を盛り上げるべく, グロリオーサの生産に邁進してまいります. そして, この邁進を加速させるべく, また, さまざまな取り計らいを賜りまして, 博士課程で研究を続けられることになりました. 所属は愛媛大学連合農学研究科になりますが, キャンパスは引き続き物部です. 物部キャンパスの教職員の皆様方には, 引き続き, ご指導・ご鞭撻の程をよろしく申し上げます.
だいぶ時間がオーバーしてしまい恐縮です. では最後に, 改めて, このような会を開いていただいた後援会の皆様方, 教職員の皆様方に, そして農学部での 4 年間に, 厚く御礼を申し上げます.
本当にありがとうございました.