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植物と、ゲノムの構造

植物で最初に全ゲノム構造が決定されたのは、双子葉植物シロイヌナズナです。シロイヌナズナにはタンパク質をコードする遺伝子が約 27,000 存在します。単一コピー遺伝子の割合は 35 %で、ゲノムサイズの小さいショウジョウバエの 72.5 %と比べてかなり低く、シロイヌナズナでは多くの遺伝子が多重遺伝子族を構成していることが分かります。

[目次]

植物と遺伝子数

シロイヌナズナに続いて、イネ (タンパク質コード遺伝子約 38,000)、ヒメツリガネゴケ (約 36,000 遺伝子) の核ゲノム配列が解読されました。その後、塩基配列決定の技術が向上して、ポプラ (約 46,000 遺伝子)、ブドウ (約 30,000 遺伝子)、トマト (約 35,000 遺伝子)、トウモロコシ (約 33,000 遺伝子)、ダイズ (約 46,000 遺伝子)、コムギ (約 124,000 遺伝子) などの有用植物の核ゲノムの配列が次々と決定されました。小麦は 6 倍体ですので、平均的な植物のタンパク質をコードする遺伝子数は約 3 万数千程度だと考えられます。動物のマウスや人のタンパク質をコードする遺伝子数は約 22,000 程度です。この差は一体どこにあるのでしょうか。

植物と動物における、遺伝子数の違い

原因 の 1つは、植物ゲノムの重複性です。一方で、mRNA とタンパク質の種類では哺乳類が植物を上回ります。RNA の包括的解析から、の mRNA は約 66,000 種と予測されました。選択的スプライシングなどにより単一の遺伝子から複数の mRNA とタンパク質が生み出されるのです。シロイヌナズナとイネの mRNA の種類はそれぞれ 35,000, 44,000 と推定されました。植物は多重遺伝子族を形成して遺伝子機能を多様化させたのに対して、動物は、転写後修飾によりタンパク質機能を多様化させた傾向があります。

トランスポゾン

ゲノムは遺伝子だけで構成されているのではありません。ゲノムには多数の反復配列が含まれています。反復配列の中はトランスポゾンと呼ばれる可動性遺伝因子が含まれていて、多くの真核生物ゲノムの約 10 %を占めています。トウモロコシでは、核ゲノムの約 80 %がトランスポゾンで構成されています。トランスポゾンの挿入はその近傍遺伝子の発現に影響を与えることがあります。トウモロコシの穀粒斑入り、キンギョソウアサガオの絞りなどは、ある細胞集団におけるトランスポゾンの転移に伴う色素合成酵素遺伝子の発現変化が原因です。

スペーサー領域と生物の複雑さ

ゲノムにおいてスペーサー領域は、長い間「意味のない」不活性な領域と認識されてきました。しかし、包括的な RNA 解析から、実はスペーサー領域のほとんどが転写されていることが明らかになりました。ゲノムの大半は転写されて RNA となっていると考えられています。その中には、その中には mRNA と同様に Pol Ⅱ によって転写され、その転写物の5’ 末端にはキャップ構造を、3’ 末端にはポリ A をもつものもあります。タンパク質をコードする 遺伝子のアンチセンス鎖 RNA も転写されています。これらは、非コード RNA (ncRNA) とよばれています。低分子の miRNA、長鎖 ncRNA などの中には、遺伝子発現制御に関与するものがあります。多細胞生物の複雑さを決定しているのは、タンパク質をコードする遺伝子数ではなく、むしろ、ncRNA の多様性なのではないか、という考え方もあります。

 


 

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