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染色体のかたちとはたらき

[目次]

核型

生物の染色体は、それぞれの種に固有の数や形態をもっています。このことを染色体の数と形態で表したものを核型 (カリオグラム) といいます。一方、動原体の位置、付随体や二次狭窄の有無などについて図で示すものを、イディオグラムといいます。

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ライムギの核型。C バンド分染法によるライムギ (2n = 14) 染色体のカリオグラム。1R 〜 7R 染色体とそれぞれの短腕または長腕だけをもつ末端動原体型染色体を示しています。

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ライムギの核型。1R 〜 7R 染色体のイディオグラム。


近年、より正確な核型を得ることができるようになりました。植物間の核型の比較をもとにして、植物の類縁関係や系統分化などを調べることができ、これを核型分析といいます。

コヒーシンとコンデンシン

染色体は, DNAという情報 (データ) を入れた「USBフラッシュメモリースティック」に喩えられます。体細胞分裂中期の染色体は、2 つの同一の染色分体から構成されていて、動原体付近で結合しているため、アルファベットの「X」のように見えます。それぞれの染色分体には、まったく同じ情報をもつDNAが含まれています。この染色分体は、細胞周期の S 期で形成されて、G2 期を経て分裂期 (M期) の終わりに分離するまでコヒーシンというタンパク質複合体によってつなぎ止められています。コヒーシンは染色分体の全長にわたって存在しています。M 期に近づくと染色体は凝縮し始めますが、これを助けているのはコンデンシンというタンパク質です。コンデンシンは、染色体の軸上に蓄積することによって凝集が進行すると言われています。

詳しくは、こちらのページも参考にしてください。

染色体にとって不可欠な 3 要素

動原体

染色体にとって不可欠な要素として、1 つ目に、動原体 (セントロメア) があります。動原体は、DNA 複製後に姉妺染色体を1つにまとめているだけでなく、細胞分裂において染色分体が両極に分離するとき、紡錘体の糸 (微小管からなる) が結合する部位です。つまり、染色分体が均等配分されるための重要な役割を果たしていると言えます。動原体にも特殊な配列の DNA (セントロメア DNA ) が含まれています。ヒトのセントロメア DNA の 塩基配列は、主に 171 bp の長さのアルフォイド DNA とよばれる反復単位から構成されています。この DNA の特徴は,染色体のほかの部分にはみられない多くのタンパク質が結合する点にあります。このタンパク質の 1 つである CENP-A (Centromere protein-A) は、ヒストン H3 に非常によく似ていて、セントロメアヌクレオソームでヒストン H3 の代わりをしていると考えられています。(セントロメア特異的ヒストン H3 )。

分裂中の細胞では, 1対の板のような動原体がセントロメア領域の染色体の表面に存在します。これはキネトコアという三層構造で、内層は CENP-C、-A、-H などのタンパク質から構成されていて、外層は CENP-F などのタンパク質で構成されています。最も外側には CENP-E (キネシン) などのモータータンパク質などが存在し、この場所が紡錘体の糸 (微小管) の結合部位として機能しています。動原体の一部は、アルフォイド DNAと CENP-B やその他のタンパク質から構成されています。

ヒト以外の生物種のセントロメア DNA については、生物によってその配列は異なり、しかも同一生物の各染色体の間でも違いがみられます。植物では、ヒト CENP-A のようなヒストン H3 に似たタンパク質として、シロイヌナズナでは HTR12、タバコでは NtCENH3 など、種別に同定されています。これらのアミノ酸配列については、ヒストン H3 と共通の保存領域と N 末端可変領域をもつことがわかっています。

テロメア

染色体 DNA の末端はテロメア DNA の短い繰返し構造から構成されています。これは染色体を直線上に維持するためにはなくてはならない構造です。またテロメアは、染色体の端の目印としても役立っていて、細胞は染色体の端が切断によって生じたものか本来の末端であるのかを区別できます。こうしておけば切断によって不本意に生じた末端のみを修復すればよいので、テロメアはそういった意味でも必要不可欠です。テロメア領域には特別なテロメアタンパク質が結合してイテ、テロメアヌクレオソームは特殊な構造をしています。このような構造が染色体の末端を保護する役目を果たしているのです。

DNAの複製起点

DNA 上の複製起点は、染色体自身が自分と同じコピーをつくるために必須です。真核生物では1本の染色体 DNA が非常に長いため、多くの複製起点を備えています。そうすることによって、染色体 DNA の複製のスピードアップをはかっているのです。

動原体、テロメア、複製起点の 3 要素があれば、染色体DNAとしての最小限の構造と機能が揃っていると言えます。これらに加えて、ある生物のDNAの断片をつなぎ合わせることによって、人工染色体が作製できます。

細胞分裂時以外の染色体

細胞分裂が終わると、染色体は再び脱凝縮してほどけた状態になります。しかし、間期核内においても、各染色体 DNA はランダムに分散しているのではなく、一定の領域を占めています。

植物染色体の二次狭窄部には、リボソーム RNA 遺伝子がたくさん反復して存在していて、その部分は常に核小体 (仁) に付着しています。これは、染色体の構造と機能が結びついていることを示しています。ムギ類の分裂組織の間期核において、動原体部は核の一方の極付近に位置し、両端のテロメア部はそれと反対側の半球に位置していることが分かっています。すなわち、1本の染色体は、動原体付近で折れ曲がるようにして核の中に配置されているのです。これをラープル配向といいます (オーストリアの解剖学者 C. ラープルが発見)

減数第一分裂前期の二価染色体の対合がおきる合糸期の細胞でも特徴的な染色体の配向がみられます。対合したテロメアが集合して細胞の一極へ集まり (テロメアクラスタリング)、ループになった染色体の動原体領域が対極に集まる構造をとる. これは、ループ状の染色体のひもをテロメア付近で束ねた花束のようであることから、ブーケ配向と言われます。植物ではトウモロコシ、エンバク、ライムギ、コムギなどでも観察されています。

染色体テリトリー

体細胞の核内では、染色体は区画化されています。各染色体のクロマチンの糸は、テリトリーの構造、つままり、染色体が高度に区画化され、染色体の腕が互いに混ざりあわない構造をとりながら、間期核において安定した核内配置を維持している場合が知られています (染色体テリトリー)。この核内配置は、染色体の遺伝子密度や大きさ、遺伝子発現と密接に関わっています。たとえば、ヒトやその他の霊長類では、遺伝子密度の高い染色体は核のより内部に、遺伝子密度の低い染色体は核の周辺部に位置しています。

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