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花の形態形成を説明する「ABC モデル」とは

花の構造を観察すると、4 つの同心円状の領域に、外側から萼片、花弁、雄蕊、雌蕊の 4 種類の花器官がリング状に配列されているのが分かります。

これらの花器官は、どのように形成されるのでしょうか。

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【目次】

 

花芽の形成

栄養成長から生殖成長への転換が起こると、頂端分裂組織の分裂パターンが急激に変化し、外側から萼片、花弁、雄蕊、雌蕊の順番に分化し、花器官が完成します。

ストックのような総状花序では、頂端分裂組織が膨大し、ドーム状の花序分裂組織になり、周縁部から規則正しく小花の分化が続きます。

はじめに分化する突起は、小花とその直下につく葉の突起です。また、キクの頭状花序のように多数の小花が集まり、1 つの花の形になるものでは、頂端分裂組織が膨大してドーム状になって、その周縁部に総苞片 (総苞鱗片ともいう) が分化します。

その後、ドーム状の花床に多数の小突起が分化し、その 1 つ 1 つが小花へ発達します。

花器官がどのように形成されるかを、分子遺伝学的にモデル化したのが「ABCモデル」です。 

ABCモデルの発見

本来あるべき器官が、他の器官に置き換わってしまう変異をホメオティック変異といいます。シロイヌナズナで花器官の並び方が変化したホメオティック突然変異体を調べた結果、花器官は、A クラス遺伝子、B クラス遺伝子、C クラス遺伝子の 3 種類の遺伝子の組み合わせで作られると考えられ、1991 年、「ABC モデル」と言う単純かつ明快な分子遺伝学的モデルが提唱されました。この ABC モデルは、花器官形成の順番を決める基本型と考えられています。なお、ABC すべての遺伝子が働かなくなると、花器官は全て葉様の器官になります。

現在では、胚珠形成に関わる D ランク遺伝子や、花弁、雄蕊、雌蕊を作るために必要な E クラス遺伝子の存在も明らかになっていて、ABC モデルは「ABCDE モデルへ発展しています。

ABCモデルとは

ABC モデルでは、外側から 4 つの領域を仮定し、A クラス遺伝子、B クラス遺伝子、C クラス遺伝子の 3 種類の遺伝子を想定します。それぞれの遺伝子は、機能する領域が決まっていて、A クラス遺伝子は外側の領域 1 と 2、B クラス遺伝子は領域 2 と 3、C クラス遺伝子は領域 3 と 4 で機能します。領域 1 では A クラス遺伝子が単独で働く萼片を作り、領域 2 では A クラス遺伝子と B クラス遺伝子がともに働くと花弁を、領域 3 では B クラス遺伝子と C クラス遺伝子がともに働くと雄蕊を、領域 4 では C クラス位遺伝子が単独で働くと雌蕊を作ると考えます。

また C クラス遺伝子は分裂組織の分裂を終了させる機能を持ち、さらに A クラス遺伝子とC クラス遺伝子は互いに抑制し合うと仮定します。

ABC モデルの適用性

花器官形成の順番を決める基本形として、ABCモデルの考え方はには高い適応性があります。例えばユリやチューリップは、領域 1 と 2 に萼片と花弁の形態が酷似した花被片と呼ばれる花弁状器官をつくります。この場合、花被片は、萼片の花弁化と想定できます。つまり B クラス遺伝子が領域 1 まで拡大して発現している「改変 ABC モデル」て説明できるというわけです。

しかし、花卉園芸植物には、バラやツバキ、トルコギキョウのように八重咲きでも雄蕊や雌蕊をつくるるものがあります。そのため、すべての八重咲きを「萼片 - 花弁 - 花弁-」が繰り返される C 遺伝子欠損タイプで説明することはできません。

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