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光が光合成促進へ与える影響

光合成は, 植物のおかれている環境条件によって促進されます.

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環境条件とは例えば, , 光, 葉温度, CO 2 濃度, 窒素です. ここではこれらの環境条件のうち, 光について説明します.

【目次】

 

補償点

補償点とは何でしょうか. 植物は, 暗黒条件では光合成ができません. そのため, 呼吸によって CO2 が放出されます. 光が強くなるに従って光合成速度が高まりますが, 呼吸速度と光合成速度が見かけ上ゼロになる光の強さのことを, 光補償点 (light compensation point) と言います.

補償点は陰生植物で低く (1 〜 5 μmol・m^(-2)・s^(-2)), 陽生植物で高くなっています (10 〜 20 μmol・m^(-2)・s^(-2)).

陽生植物 (sunplant, heliophyte, intolerant plant) とは, 耐陰性が低く, 明るい場所で育成する植物です. 陰生植物より光合成量, 呼吸量ともに大きく, 光補償点・光飽和点も高いのが特徴です. 葉は層状に配置されていて, 柵状組織がよく発達していて葉厚があります. 花卉ではチューリップ, パンジー, サクラ類, ツツジ類, アサガオなどがあります.

陰生植物 (shade plant, shade tolerant plant) は, 耐陰性が強く, 暗い場所で生育する植物です. 陽生植物に比べ光合成量, 呼吸量ともに小さく, 光補償点, 光飽和点が低いのが特徴です. 葉は一平免状に配置され, 柵上組織はあまり発達していません. 花卉ではシュンラン, ミズヒキ, ユキツバキ, アオキ, ヤツデなどがあります. また, コケ類やシダ類の多くも含まれます.

実際の栽培では, 光補償点を考慮する必要はほとんどありません. しかし, 植物を室内で鑑賞するときの品質保持においては, 光補償点以上の光を与える必要があります.

光飽和点

C3 植物の光合成速度は, 光が強くなるにしたがって直線的に高まります. しかし, 光がある一定の強さになると, それ以上高くなりません. これを光飽和点といいます (light saturation point).

光飽和点は, クロロプラスト内の CO2 濃度が低下するために起こります. そのため, 大気の CO2 濃度を高めると, 光飽和点は高まります.

C4 植物は CO2 の濃縮機構を持ちます. そのため, 高濃度の CO2 をクロロプラストへ供給できるので, 光飽和点はありません.

光飽和点は, 陽生植物で高く, 陰生植物で低くなっています. また, 同じ植物でも, 光が弱い条件で生育した葉 (陰葉) で低く, 強い条件で生育した葉 (陽葉) で高くなります.

光飽和点を超える強い光が当たり続けると, 光阻害が起こって, 光合成速度が低下します.

光阻害 photoinhibition

チラコイド膜にある光化学系Ⅱ(photosystem 2, PSⅡ) は, 光によって損傷し不活性化されますが, 修復機構によって再活性化されます.

光による損傷速度が, 修復速度を上回ると起こるのが, 光阻害です.

光合成に利用されなかった過剰な光は, 熱として放出されるほか, 光化学系Ⅰ(photosystem 1, PSⅠ) から放出された電子が O2 と結合して過酸化水素 (H2O2) を作ります. H2O2 は不活性化した PSⅡ の修復を阻害します. そのため, 光阻害が顕著になります.

光呼吸には, H2O2 の発生をおさえるため, PSⅡの修復阻害を防ぐ作用があると考えられています.

光飽和点が低い観葉植物である洋ランなどに直射日光が当たると, 葉焼けが起こってしまいます. この原因は, 葉温の上昇のほか, 光阻害の発生にあります. 光飽和点が低い植物は, 葉温の上昇と光阻害を防止するために, 遮光が必要です.

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