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農薬を使用しすぎると効かなくなる?: 病害虫防除の基本的な考え方 (3)

病害虫防除の基本的な考え方, およびその方法を紹介する「病害虫防除の基本的な考え方」. 前回は, 病害虫が発生する 3 つの要因について説明しました.

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第 3 回目になる今回は, 農薬を使いすぎると, 病害虫に効かなくなる理由を説明します.

抵抗性害虫・耐性菌はなぜ増加するのか

農薬が効かななくなった (農薬への効果を「感受性」と言います) 害虫を抵抗性害虫といい, 病原菌の場合は耐性菌といいます.

なお, 抵抗性や耐性については, コチラの記事も参考にしていただけたらとおもいます.

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さて, それまでは効果があった農薬が効かなくなり, 病害虫が増加して防除が困難になる状況はひんぱんに起こります. そこで新しく農薬が開発されますが, その新しい農薬もまた効果がなくなってしまいます.

なぜ抵抗性・耐性をもつ病害虫が増えるのでしょうか.

害虫や病原菌の自然個体群には, もともと殺虫剤や殺菌剤に抵抗性・耐性遺伝子を持つ個体 = 農薬に強い個体が少なからずいるからです. 同じ農薬を繰り返し使用することで, 農薬に強い個体が選抜されて生き残り, 自然個体群において次第に優先的になって, 農薬が効かなくなる状況が生まれてしまうのです.

 

選択性農薬の問題点

農薬が効かない病害虫が増加する背景には, 農薬の機能性の変化もあります.

農薬が病害虫の生命活動を阻害するメカニズムを「作用機作」, 実際の作用部位を「作用点」といいますが, 1970 年代以前に使用されていた農薬は,「多作用点・非選択制」のものがほとんどでした. つまり, 1970 年代以前に使用されていた農薬は, 対象病害虫に対する阻害の作用点が多かったのです. この, 「多作用点」「非選択性」の農薬が多かった頃は, 農薬に強い病害虫の増加は, ほとんど問題になりませんでした.

近年の農薬は, 害虫や病原菌の限られた部位 (生理機能) にのみ作用点をもつ, 選択性の高いものが中心になっています. これは農薬の安全性や, 環境問題への社会的要請が強くなったためで, 「多作用点」「非選択性」に比べ選択性の高い農薬は, 人畜への安全性が高いからです.

しかし, 作用点が狭い, ピンポイントに病害虫の作用点を阻害するタイプの農薬は, 病害虫にとっては, 少ない遺伝子の変異で対抗できるということです. このために, 抵抗性や耐性をもつ病害虫が選抜されやすくなるのです.

効果のない農薬が増える「交差抵抗性」

殺虫剤や殺菌剤のある特定の薬剤に対して抵抗性が発達した場合, これまでしようしていない他の薬剤に大しても抵抗性が発達することを, 交差抵抗性といいます.

交差抵抗性は, 同じ作用機構をもつ薬剤で現れます. 異なる商品名であっても, 同じ作用機構をもつ薬剤を散布すると, 抵抗性の病害虫が増加する危険性があります.

農薬への耐性をもつ病害虫を増加させないためにも, 農薬の作用機作につての情報をよく知ったうえで, 薬剤を使用しなければなりません.

 

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今回は農薬を使用しすぎると効かなくなる理由について簡単に説明しました. 次回は, 病害虫の発生の予想について説明します.

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