高知と農業、あと哲学とか

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農作物が病害虫に弱いのはなぜ?: 病害虫防除の基本的な考え方

今回から数回にかけて, 農作物の病害虫防除について, その基本的な考え方を紹介します. 第 1 回目は「農作物が病害虫に弱いのはなぜ?」. 農作物が病害虫に弱い理由を説明します.

農作物が病害虫に弱い理由 (1) 農耕地の生物多様性の欠如

農業が営まれる水田, 畑, 果樹園などにおける生態系は, 農業生態系 (農地生態系, 耕地生態系とも) といわれます.  農業生態系は, 自然林や原野の「自然生態系」とは区別される人工的な生態系です.

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[図1 自然生態系] (『新版 農業の基礎』農文協, 2003 より)

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[図2 農業生態系] (『新版 農業の基礎』農文協, 2003 より)

自然生態系では, 多様な生物が複雑な食物連鎖の関係をもっていて, その相互作用は安定的です. つまり, 自然生態系では, 特定の生物が異常に勢力を伸ばしたり, 逆に決定的なダメージを受けたりすることはあまりありません (しかしたとえば, 極相林になると, 例外的な状況が生まれます).

農業生態系においては, 同一作物の同一品種で, 同じ発育段階といったふうに画一的に植物が栽培さることがほとんどです. 圃場からは, 生産目的以外のたとば雑草などは排除されます. つまり, 植物相は単純化しています.

植物相が単純化している農業生態系においては, 同時に, そこに生息する昆虫や微生物も, 単一の農作物を栄養源とするために, 種類が単純化していきます.

天敵がいない農業生態系においては, 昆虫相は, 害虫が勢力を広げやすく, 農薬を多量に使わなければなりません.

 

農作物が病害虫に弱い理由 (2) 品種改良による自衛力の弱化

農作物は, 野生種に比べて自衛力が弱化しているので, 病害虫に弱い.

植物は, 草食動物や病原菌の攻撃から身を守るために, さまざまな有毒物質を進化の過程で獲得してきました. たとえば, 辛味, 苦味, 渋味, エグ味といった不快な味は, 草食動物を忌避させるための生体防御物質です. 品種改良は, こうした生体防御物質を除去することで無毒化, 良食味化することです. 

もちろん, 品種改良された農作物であっても, 有毒の防御物質は残っています. たとえばジャガイモの新芽や茎葉に含まれるソラニン, 赤くなる前の青トマトのトマチンです. ソラニンやトマチンは, ジャガイモ属の植物が自衛用に武装した有毒な化合物 (アルカロイド) です.

農作物が病害虫に弱い理由 (3) 農作物の栄養価の高さ

農作物の高い栄養価もまた, 農作物の病害虫の原因です.

特に, 害虫は窒素肥料の効いた高タンパクな作物を好みます.

また, 作物に病気を起こす微生物は, 栄養価の高い農作物を攻撃することが多い.

さらに問題なことに, 多窒素で高タンパクな作物を食べた害虫は発育が非常に良く, 繁殖能力が高い害虫が増えることになります. 結果的に, 次世代の害虫の個体数が飛躍的に増加します.

農作物は, 長い時間をかけて人間の都合で改良された低毒性の植物で, 人間の保護管理の元で高栄養・良食味に育てられる植物です. つまり, 農作物は「人工物」です. 野生植物と違い, 農作物は自衛力が弱化しているので, 食物連鎖の 1 次消費者である病害虫の攻撃を受けやすいのです.

以上, 農作物が病害虫に弱い理由でした. 次回は「病害虫発生の要因」について説明します.

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