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花卉園芸における幼若相・花熟相

植物は種子発芽後, 花芽形成の起こらない「幼若相」(juvenile) を経て, 花成刺激に反応して花芽形成を開始できる能力のある「花熟相」 (ripeness to flower) へ移行します. 花卉園芸で取り扱われる植物には, どういった幼若相・花熟相があるのでしょうか.

 

【目次】

 

1. 幼若相

種子発芽した植物は, ある一定の葉齢に達するまで栄養成長を続けます. この段階では, どのような環境条件が与えられても花芽形成の起こらない生育相があります. このような生育相を幼若相 (juvenile phase) といいます. そして, 植物には幼若相があるという性質を幼若性 (juvenility) といいます. 幼若相の長さは花卉の種類によって異なります. 幼若相は, 一・二年草や宿根草では短く, 球根類や花木では長い傾向があります.

一年草スイートピースターチスなどでは, 吸水した種子が低温に感応して花芽分化するので, 幼若性はないとされています. ストックは本葉 2 枚時に低温に感応しあすが, この時点で幼若性は終了していると考えられています. また, シネラリア属やビジョナデシコは, 5 〜 8 節で幼若性を終了します.

チューリップには 4 〜 7 年の幼若相があります. 実生の場合, 萌芽すると毎年はを 1 枚ずつ増やして球根を更新し, これが数年繰り返され葉が 3 〜 4 枚になると花芽分化します.

花木の幼若相は, 通常は数年から数十年です. ただ, バラやアカシア属などのように発芽後 1 年以内に終了するものもあります. 主な花木の幼若期間は以下の通りです.

  • バラ属・・・ 20 〜 30 日
  • アカシア属・・・ 4 〜 5 ヶ月
  • ダリア属・・・ 1 年
  • フリージア属・・・ 1 年
  • ユリ属・・・2 〜 3 年
  • セイヨウキヅタ・・・ 5 〜 10 年
  • セコイア・・・ 5 〜 15 年
  • イカモアカエデ・・・ 15 〜 20 年
  • ナラ・・・25 〜 30 年
  • ブナ・・・ 30 〜 40 年

1.1 栄養繁殖由来植物の幼若性

宿根草のクキの実生苗には幼若相があります. 栄養繁殖で成長した株でも, 夏の高温を経過してロゼットになった吸枝や腋芽は, 幼若性をもちます.

1.2 一稔植物の幼若期間

その一生のうち, 1 回だけ開花して枯死する植物があり, 一稔 (一回結実性) 植物と言います. 一稔植物の幼若相は非常に長いのが特徴です. プヤ・ライモンディーで約 100 年, アノリュウゼツランで 60 年以上, タケ属約 120 年, ササ属約 40 〜 60 年などです.

2. 花熟

幼若相を経過した後, 日長や温度などの花成刺激に反応して, 花芽形成が開始できる能力をもった栄養成長相の状態を, 花熟 (ripeness to flower) といい, この生育相を花熟相といいます.

花熟は生理的な変化です. しかし, 形態的な変化として現れることもあります.

たとえばセイヨウキヅタ. せイヨウキヅタは, 幼若相ではつる性の茎に 3 〜 5 裂の掌状葉を互生しますが, 花熟相へ移行すると葉が卵型になって螺旋状に着生し, 茎頂部に花序をつくります.

アカシア属のなかには, 幼若相の葉は 2 回羽状複葉ですが, 花熟相になると葉柄が扁平化して偽葉 (phyllode) とよばれる 1 枚の葉のような形になり, 葉と同じ機能をもつようになる種があります.

3. 成長軸と幼若相, 花熟相, 生殖成長相の勾配

花熟相の植物は, 花成刺激によって生殖成長相へ移行します. 幼若相, 花熟相, 生殖成長相の経過には, 時間的な順序があります. つまり, 成長軸にそって, こうした相が現れるのです.

たとえばトウモロコシですが, 軸の成長は頂端分裂組織の分化によって行われています. ですので, 最初につくられる幼若相の組織や器官は, 軸の下部になります. 次いで成熟相 (花熟相), 生殖成長相が現れて, あとから分化した相ほど, 頂端分裂組織のある軸の末端部にあります.

 

参考文献


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