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花卉園芸と種子の休眠

植物における休眠 (dormancy) とは, 生育をほとんど停止している状態のことを言います. たとえば, 形成直後の種子や球根は, 発芽に好適な環境におかれても発芽せずに休眠状態にあります.

種子や球根だけではありません. 花木には春に萌芽し, 新梢の伸長が停止した夏から秋にかけて冬芽とよばれる休眠芽をつくるものがありますが, これも休眠です.

休眠には多発休眠と自発休眠があります.

  • 他発休眠 (imposed dormancy, ecodormancy)・・・発芽や萌芽の生理的要因が満たされているのに, 水分や温度, 酸素など環境条件が不良で発芽できていない状態
  • 自発休眠 (innate dormancy, endodormancy)・・・環境が整っていても発芽しない状態

 

【目次】

 

1 自発休眠の要因

自発休眠の要因は, 次のように考えられています.

1.1 胚芽形態的に未完成

種子が親植物から離れた時点では, 胚が形態的に完成していなません. そのため, 完成するための期間が必要です.

フクジュソウ, クリスマスローズ属, セイヨウトネリコ, ラン科植物など

1.2 胚の成熟に温度が必要

種子の胚が形態的に完成しているにも関わらず, 生理的な成熟には温度刺激が必要です. 低温が必要な場合 (秋に種子がつくられるノイバラ, ハナミズキ, ユリノキ, サクラソウ, リンゴなど) と, 高温が必要な場合 (初夏に種子がつくられるイネ, オオムギなど) があります.

1.3 種皮が硬い

種皮が硬くて水や空気を通しにくい.

アサガオ, ルコウソウ, スイートピー, ルピナス属, ボタン, カンナなど

1.4 種皮の一部が綿毛や翼に変化している

水を通しにくい.

アネモネ, ローダンセ, センチコウ, ストック, シンテッポウユリなど

1.5 種皮や果実に発芽抑制物質が含まれている

発芽抑制物質のアブシシン酸などが含まれています.

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パンジー, ナナカマドなど

1.6 光が必要

ほとんどの種子は光の有無にかかわらず発芽します. しかし, 光があれば発芽率が高まる種子を好光性種子 (positively photoblastic seeds) あるいは明発芽種子 (light germinating seed) と言いいます. 反対に, 光があると発芽率が低下する種子もあり, 嫌光性種子 (negatively photoblastic seeds) あるいは暗発芽種子 (dark germinating seeds) と言います.

2. 発芽促進や発芽率を高める種子処理

実際の栽培では, 播種時期の調節や, 生育・開花をそろえるための均一に発芽させることが, 作業効率の向上になります. そのため, 発芽を促進したり, 発芽率を高める種子処理が行われます.

2.1 自発休眠のある種子

いくつかの休眠打破を施します.

胚が形態的に未完成の場合は, 対処方法がないので, 胚の完成を待ちます. 温度が必要な種子には, 高温もしくは低温処理を施します. 種皮が硬い場合は, 硫酸などの薬品による軟化, あるいは傷をつけたり, 種皮をはがしたりします. 綿毛や翼をもっている種子は, 砂などでみがいて脱毛・脱翼します. 発芽抑制物質が含まれている種子は, 洗浄して発芽抑制物質を洗い流します.

2.2 難発芽種子

ジベレリン (GA) 処理が有効.

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50 〜 200 ppm の GA3 処理. GA は, α-アミラーゼ活性を高め, 胚乳中のデンプンを分解し, グルコースを作ります. これによって呼吸活性が高まります.

GA 処理が施されるのは, シクラメン, ホウセンカ, カランコエ属, ラバンデュラ属, ストック, プリムラ属, グロキシニア, ジニア属などです.

2.3 種子の精選

大きさ, 形, 重さ, 比重などの形態的特性をもとに ,充実していない種子を排除・精選することで, 均一な発芽が期待できます. 

2.4 プライミング処理

種子を高浸透圧溶液に一定期間浸漬し, 発芽機能は高まっているが発芽しないレベルまで水ポテンシャルを高める処理のことを, プライミング処理と言います. オスモプライミング処理とも. これによって, 種子はわずかな水刺激を与えるだけで均一に発芽します.

処理には硝酸塩やリン酸塩のような, 無機塩またはポリエチレングリコールなどの高浸透圧溶液が利用されます.

通常, 吸水して催芽した種子は, 乾燥すると死んでしまいます. しかし, プライミング処理した種子は, 乾燥後も発芽力を維持し, さらに, 幅広い温度域で発芽します. ただし, 長期保存には不向きです.

トルコギキョウやパンジーで用いられます.

3. 発芽とフィトクロム

発芽には, 植物の形態形成や光への反応にかかわる光受容体タンパク質の 1 つ, フィトクロム (phytochrome) がかかわっています. フィトクロムは, 赤色光 (R) と遠赤色光 (FR) に反応します.

3.1 フィトクロムの働きの発見

発芽へのフィトクロムの働きは, 1952 年, ボースウィック (H.A. Borthwick) らによって発見されました. ボースウィックらは, 赤色光と遠赤色光が, レタス種子の発芽に促進的および阻害的に, そして可逆的に働くことを発見したのです.

レタス種子は, 暗黒ではほとんど発芽しませんでしたが, 短時間の赤色照射でほぼ 100 %発芽しました. これに遠赤色光を照射すると, 発芽率が抑制されました. しかし, さらに赤色光を照射すると, 発芽率が回復しました. このように, 赤色光と遠赤色光の繰り返しによって, 発芽の促進と阻害が起こることが認められたのです.

3.2 フィトクロムのはたらき

フィトクロムには, 活性のある Pfr 型と, 不活性な Pr 型の 2 つがあります. 

オートムギの Pr 型は, 666 nm に吸収極大があり, 赤色光を受けると Pfr 型になり生理反応を起こします. 逆に Pfr 型は 730 nm に吸収極大があり, 遠赤色光を受けると Pr 型になって生理活性が失われます. また, Pfr 型は, 暗黒下では次第に Pr 型へと変化し, 活性が失われてしまいます.

Pfr 型による発芽の誘導は, Pfr 型がジベレリン (GA) 生合成遺伝子を発芽させて, 発芽を促進させる GA1 や GA4 などの生合成を活発にさせるために起こります.

4. 上胚軸休眠 epicotyl dormancy

ユリ科の植物には, 秋に発芽したあとに, 幼芽が地中で鱗茎状になり, 翌年の夏を休眠状態で過ごすものがあります. この芽は, 2 年目の冬に低温にあうことで茎頂が成長し, 春に萌芽し, 初夏から秋に開花します. このような休眠を上胚軸休眠といいます.

サルトリイバラ, ヤマユリ, カノコユリ, ササユリなどがこれに当たります.

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