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植物の体細胞分裂

細胞が分裂する理由は、成長に必要な細胞の供給と、子孫を残すための生殖を可能にするためです。

細胞はその生命活動により構成成分を倍加させるので、細胞が大きくなります。そのことによって生じる細胞膜表面積と細胞体積とのアンバランスを元に戻さなければなりません。細胞分裂にあたり、細胞のほとんどの構成成分は、ほぼ 2 倍になりますが、染色体やそれに含まれる DNA は正確に 2 倍にならなければなりません。そして分裂時に、それぞれの構成成分は娘細胞にほぼ 2 等分されるが、染色体だけは正確に分配されます。植物は一生の間成長が続き、絶えず新しい細胞を供給しなければならないので、細胞分裂はほぼ一定の速さで起こります。

[目次]

細胞周期

細胞分裂は連続的な過程ですが、ある細胞が分裂を行い、次の分裂が行われるまでの期間を細胞周期といいます。顕微鏡で細胞を観察すると、染色体 (もしくは染色糸) が見え、有糸分裂および細胞質分裂をしている期間を M 期と言います。M 期と M 期の間で核が観察される期間を間期と言います。M 期は細胞周期のほんの一部で、細胞周期のほとんどは間期です。長い間期は、G期、S 期、G2 期に分けられます。M 期の後に生じた娘細胞が次の間期に入ると、細胞では各種物質の生合成が起こり、細胞も成長します。この時期を G1 期といいます。G1 期は、次の S 期 (DNA合成期) までの間 (ギャップ) という意味合いを持ちます。S 期に入ると、DNA合成が開始されて核の DNA 量が 2 倍になります。そして細胞が G2 期に入り、染色体分裂に必須であるチューブリンなどの分裂装置のタンパク質が合成されます。細胞周期の各時間は、種や細胞によって異なります。

分裂にかかる時間

植物の根端の分裂細胞を調べてみると、M 期にかかる時間は数十分から数時間で、どの植物でもひとめぐりの細胞周期 (M 期 → G1 期 → S 期 → G2 期 → M 期) のうちのほぼ 1 割の時間に須藤していることがわかります。また、同じ細胞でも温度によって細胞周期の各時間は変化します。一般に、温度が低くなるにつれてそれぞれの期間は長くなります。

G0

さらに、生物の細胞はすべてが細胞分裂を繰り返しているわけではなく、多くは細胞周期をまわることをやめて分裂しない状態ではたらいています。そのような時期を G0 期と言います。細胞周期には G1 期から S 期に入る前 (G1 チェックポイント)、G2 期から M 期に入る前 (G2 チェックポイント)、M 期の終了前 (中期チェックポイント) にそれぞれチェックポイントが定められていて、それを超えるかどうかについて、細胞な以外の環境や準備が整っているかが確認され、調節されていることが分かっています。たとえば、G1 チェックポイントでは、DNA 合成の環境や準備が整うまで、 G0 期の状態で数日 〜 数年も過ごすことがあります。

体細胞分裂の過程

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体細胞分裂の過程
(a: 前期、b: 前中期、c: 中期、d: 後期、e: 終期、f: 間期 (図の出典: 福井・向井・佐藤『植物の遺伝と育種』(朝倉書店、2013))

体細胞の細胞周期のうち、M 期には核の分裂 (有糸分裂) と細胞質の分裂が含まれます。有糸分裂は前期、前中期、中期、後期、終期の 5 段階に分けられ、これに第 6 段階目の細胞分裂が加わります。動物では核分裂の後期から終期の終わりにかけて細胞質分裂が完了します。しかし植物では終期のあとに細胞の中央にしきり (細胞板) ができて細胞が 2 分割されます。この分裂は植物が成長するときの細胞分裂で、減数分裂とは異なります。

では、体細胞分裂の M 期の各期における現象についてみていきましょう。

前期

間期に分散していた核内のクロマチンが凝縮し、染色体が目に見えるようになります。この凝縮にはタンパク質のコンデンシンが関わっています。細胞周期の進行に伴ってコンデンシンがリン酸化され、DNA 上にコンデンシン複合体が集合し、クロマチンが凝縮し始めます。
コンデンシンは、5 種類 (Smc 2、Smc 4、CAP-G、CAP-H、CAP-D 2) のタンパク質で構成された環状構造で、クロマチンをループ状にまとめていきます。

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コンデンシン

(図の出典: 福井・向井・佐藤『植物の遺伝と育種』(朝倉書店、2013))

クロマチンは S 期で DNA  が複製されて 2 本の姉妹染色分体になります。クロマチンの DNA  複製にともない、姉妹染色分体の前兆にわたってタンパク質複合体のコヒーシンクロマチンをたばねています。

コヒーシンはコンデンシンに似た構造で、Smc 1、Smc 3、Scc 1、Scc 3 の 4 種類のタンパク質による環状構造をしています。

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コヒーシン

(図の出典: 福井・向井・佐藤『植物の遺伝と育種』(朝倉書店、2013)) 

Smc 1 と Smc 3 は、2 本のタンパク質繊維がより合わさって紐状になっていて、両タンパク質の一端は Scc 1 および Scc 3 タンパク質が結合して環状になっています。これが、2 本の姉妹染色分体のクロマチンをたばねて離れないようにしていると考えられています。コヒーシンの接着は、後期の初めになって壊れ、姉妹染色体は引き離されます。ほとんどの植物では、動物の場合と違い、中心体のようなはっきりとした分裂装置は観察されません。しかし、中心体を取り囲む中心体マトリックスとよく似たタンパク質からなる 2 つの紡錘体極が形成されます。

前中期

核膜が崩壊して小さな断片になり、小胞体と区別がつかなくなります。形成された紡錘体極から微小管が伸びて、その一部が染色体の動原体に結合します。これを動原体微小管と呼びます。残りの紡錘体微小管は極微小管と呼ばれて、紡錘体極から反対極を目指して染色体を越えて伸び、両極から伸びたものが赤道付近で重なり合います。これら微笑間からなる細胞骨格を紡錘体と呼びます。微小管は2 種類のチューブリンタンパク質(α - チューブリンと β - チューブリン)からなっていて、微小管の動きを制御するタンパク質 (微小管結合タンパク質) などが結合しています。微小管を形成する重合核形成部は、動物細胞なら中心体に存在する γ - チューブリンがその役目を担います。しかし、中心体のない植物では、微小管の重合核形成部は、核膜に存在していて、そこに γ - チューブリンも存在すると推測されています。また、動原体微小管は、2 本の染色分体の両方から逆方向に伸びていて、各染色体はそれらに引っ張られて活発に動いています。この時期の染色体は、一定の決まった場所に位置していません。

中期

全染色体は、動原体微小管で両極に引っ張られて、両極の中間にある赤道面上に並びます。微小管は、紡錘体極と反対側に伸びた先端 (プラス端) では、2種類のチューブリンタンパク質の付加 (重合) と解離 (脱重合) が生じて、常時、伸長と短縮が繰り返されています。しかし、染色体上の動原体に付着すると脱重合しにくくなって安定します。これは、動原体に付着している微小管のプラス端(伸長も短縮も早い)でチューブリンのサブユニットを付加しつつ紡錘体極側のマイナス端(伸長と短縮はプラス端ほど速くない)ではチューブリンを減少させ、全体としてのつり合いをとっているからです。微小管が動原体に結合すると、日本の染色分体はコヒーシンの働きにより動原体でくっついているので、染色体は X 字型に見えます。この時期の染色体は、最も凝縮していて、しかも一平面上に配列しています。

後期

動原体が分離し、染色分体は両極に向かって移動します。この分離は、姉妹染色分体をつないでいたコヒーシンが活性型セパラーゼ (タンパク質分解酵素の一種) のはたらきで分解され、染色分体が離れることで始まります。セパラーゼは、セキュリンという抑制タンパク質と結合することで不活性化されています。しかし、後期に入る前に Cdc 20 (活性化サブユニット) により APC (後期促進複合体) が活性化され、これがセキュリンを分解しセパラーゼが活性をもつようになります。

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セパラーゼによるコヒーシンの分解

(図の出典: 福井・向井・佐藤『植物の遺伝と育種』(朝倉書店、2013)) 

このように姉妺染色分体が分離する前に紡錘糸付着チェックポイント (中期チェックポイント) 機構がはたらき、全染色体が紡錘糸に正しく付着したことが確認されます。動原体が紡錘糸に正しく結合していなければ、細胞周期制御系に抑制シグナルが送られます。微小管が結合していない動原体には数種のタンパク質 (Mad 2 など) が結合することがわかっていて、姉妹染色分体の分離にかかわる酵素 (APC) 活性を阻害します。このようにして姉妹染色分体の分離、すなわち中期から後期への移行は、すべての動原体に紡錘糸が付着するまでおこりません。

コヒーシンの大部分は有糸分裂の始まりで外れて、コンデンシンが結合して凝縮を引き起こします。コヒーシンは姉妹染色分体をつなぎとめておくのに必要なわずかな量が動原体部に残されて、後期になってから分解され染色分体が分離します。

一方、分離した染色分体の移動については, 2つの過程で説明されます。1 つ目は後期 A とよばれる過程で、染色体が極に近づくにつれて染色体との付着部分で動原体微小管は短くなり、染色体が極へと向かう動きを示します。2 つ目は後期 B  とよばれ、姉妺染色分体がある程度離れてから生じる現象です。極微小管のプラス端側重複域で互いに押し戻すような力がはたらき、両極が互いに押し離されるように遠ざかって、極微小管のプラス端が伸長することで微小管自体も長くなり、染色体が細胞表面とさらに近づくことになります。後期にかかる時間は分裂期で最も短いです。

終期

動原体微小管が消失し、染色体は脱凝縮を始めます。核膜が再形成され、核小体も再び現れます。次に、体細胞分裂の最後の仕上げが行われ、娘細胞の間に新しい細胞壁がつくられます。この細胞壁形成には、細胞周期の G1 期に微小管とアクチンフィラメントからなる前期前微小管束が細胞膜に沿 て細胞を一周して形成されることが関係しています。終期では極微小管が隔膜形成体をつくり、そこにゴルジ体 (細胞壁の成分を含む) の小胞が微小管に結合して赤道面領域に集積して初期細胞板が形成され、この周囲に微小管が再形成され、さらにゴルジ体小胞と結合して細胞板が広がります。細胞板が母細胞の細胞壁と融合すると新たな細胞壁となり、独立した2つの娘細胞ができあがります。動物細胞の細胞質分裂は収縮環により細胞質がくびれるようにして二分されますが、植物細胞では隔膜形成体が細胞質分裂を導くのです。

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