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ジャスモン酸、サリチル酸、そして植物の病原菌防御機構: 植物ホルモンと農業

ジャスモン酸とサリチル酸は、物質としては異なりますが、2 つとも、植物が害虫や病気から自身を守るための植物ホルモンです。

 

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【目次】

 

ジャスモン酸

ジャスモン酸はジャスミンの香りの種セブンであるジャスモン酸メチルの仲間です。そのため、香料として研究が長く続けられてきました。ジャスモン酸が発見されたのは 1962 年ですが、植物ホルモンとして認識されたのは 1970 年代になってからです。

生理作用: 食害によるジャズモン酸の発生と、全身抵抗性の発現

植物は、害虫に葉を食べられると、プロテアーゼインヒビターというタンパク質を生合成します。プロテアーゼインヒビターには、害虫の消化酵素の働きを阻害する働きがあり、つまり害虫の消化不良を引き起こします。害虫が植物の葉を食べることを嫌うようになる = 忌避作用が、プロテアーゼインヒビターにはあるのです。
ジャスモン酸を葉に処理すると、これと同じことが誘導されます。つまり、害虫の接触ストレスが起こるのです。この情報は食害を受けていない葉にも伝達され、植物体全体に、一斉にプロテアーゼインヒビターが生合成されて、害虫の食害を守るようになります。

生理作用: 病原菌への防御

病原菌への防御もまた同様です。病原菌が感染するとジャスモン酸の蓄積が起こり、病害に対する抵抗性遺伝子の発現が誘導されます。

植物はジャスモン案を通して、情報を全身に伝え、ストレスに対応しているのです。

その他の生理作用

老化や理想形成の促進、花の携帯形成などにも関与することが知られています。
なお、ジャスモン酸の一種、チュベロン酸は、ジャガイモ塊茎を誘導する物質として知られています。

サリチル酸

サリチル酸は、植物の病原菌抵抗性において、ジャスモン酸と同様の働きをします。

カビ、細菌、ウィルスなどに攻撃されると、サリチル酸の濃度が高まります。そしてその情報が植物体全体へ伝わるのです。

結果、過敏感反応や全身獲得抵抗性に関係するタンパク質 = PR タンパク質が合成されて、病原菌から植物を守ります。

病原菌の侵入と防御機構

では、サリチル酸に関連して、植物における病原菌の侵入と防御機構をみてみましょう。

静的抵抗性と誘導抵抗性

植物は、病原菌の侵入・感染に対して、いくつかの防御機構を準備しています。

第一段階では、病原菌が侵入しないように、菌糸の身長を阻止しします。

第二段階では、侵入しても病気が起きないように、それ以上の拡大を防ぎます。

植物によっては、細胞壁が最初から肥厚していたり、潜在的に抗菌物質をもっている場合がります。このように、あらかじめもっている抵抗性を静的抵抗性といいます。

病原菌が感染したあとに発動される抵抗性を、誘導 (動的) 抵抗性といいます。誘導抵抗性が感染組織から植物体全体へ広がることを、全身獲得抵抗性 (SAR) といいます。この全身獲得抵抗性を起こすのが、感染組織とその周辺に蓄積するサリチル酸なわけです。

過敏感反応死とファイトアレキシンの合成

誘導抵抗性のなかでも、菌の伸長を阻止するためにとくに重要かつ効果的な現象が、過敏感反応死 (HR) およびファイトアレキシンの合成です。

過敏感反応死とは、病原菌の菌糸が細胞内へ侵入すると、侵入された細胞が速やかに壊死 (自死) して、病原菌の菌糸をふうじこめてしまう現象です。

動物細胞のアポトーシスと同様の現象であると考えられています。

過敏感反応死を起こした細胞の周辺では、ファイトアレキシンが合成・蓄積し、PR タンパク質などの遺伝子の発現を誘導します。

ファイトアレキシンとは、病原菌の観戦後に作られる菌糸の生育を阻害する低分子の抗菌物質の総称です。宿主特異的で、特定の植物に特定の抗菌物質がつくられます。代表的なものに、エンドウのピサチン、ジャガイモのリシチン、サツマイモのイポメアマロンがあります。

PR タンパク質には、キチナーゼやグルカナーゼなどがあります。これらは糸状菌細胞壁を分解することができるために、効果的な抵抗性であると考えられています。

植物による病原菌の認識: エリシターとは?

そもそも植物は、防御機構を発動するために、どのように病原菌を認識するのでしょうか。

過敏感反応死やファイトアレキシンの合成など、誘導抵抗性を引き起こす物質は絵「エリシター」と総称されます。

エリシターは、病原菌自身が出す場合と、自然界にある物質がその機能を発揮する場合があります。

具体的にエリシターの役割を担う物質は多岐に渡ります。多糖類、キチン、キトサン、タンパク質などの生物由来のもの、あるいは紫外線や金属などせ非生物的なものもエリシターになることがあります。

病原菌の細胞が共通に持っている物質でエリシターとして機能するものは、病原体関連分子パターン = PAMPs と呼ばれます。

PAMPs は、もともと病原菌が植物に感染するために作っていたものです。しかし、病原菌から防御するために、植物が認識できるようになったと考えられています。

植物の病原菌に対する防御機構は、植物の抵抗性遺伝子の産物であるタンパク質と、エリシターとの相互作用が引き金になり、その後に細胞内で情報伝達が起きて活性化されるのです。

参考文献

  • 園芸学の基礎, 鈴木正彦, 2012, 農文協
  • 花卉園芸学, 腰岡政二, 2015, 農文協
  • ベーシックマスター 植物生理学, 塩井 祐三・近藤 矩朗・井上 弘, 2009, オーム社
  • 植物生理学概論, 桜井 英博・芦原 坦, 2008, 培風館 

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