相同染色体は、減数第一分裂期に対合しますが、対合している染色体は合計 4 本の染色分体から構成されていることになり、この時期に相同染色分体間の任意の 2 本において、同じ場所で染色体の切断が起こってその部分を交換してつながることを、「乗り換え」と言います。
乗換えには、遺伝と育種において2つの重要な意味があります。
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遺伝的意義
1 つは、染色体上における遺伝子の位置を決定できるようになった点です。乗換えが染色体上のいろいろな場所で偶然的に起こるとすると、2 個の遺伝子が離れていれはいるほど、その間で乗換えがおこる機会は多くなると考えられます。もし遺伝子 a と b の間の乗換えが c と d の間の 2 倍の頻度で起こるとすれば、a と b の間は c と d の間の 2 倍離れていると言えます。したがって、交雑実験を行い、次世代のなかでの親と異なる遺伝子型を示す組換え型の割合を調べることによって、遺伝子間の染色体上の距離が推定できるのです。
育種的意義
もう 1 つは、2 つの有用な遺伝子が相同染色体の別々の場所にあるとき、両者を同一染色体上に持ち込むことができるようになったという点です。つまり、両方の有用な遺伝子について、ホモ接合体を容易に作り出すことができるのです。別の見方をすれば、乗換えによって同一染色体、または相同染色体上の複数の遺伝子を、独立な染色体上の遺伝子と同じように混せあわせることができます。このことは、有性生殖によって遺伝的多様性を高めることにつながるのです。
組換え価の最大値
2 つの連鎖する遺伝子間の組換え価は 50 % を超えることはありえません。
乗換えは 4 本の染色分体における任意の 2 本間で起こります。2 つの遺伝子 A と B の間で乗換えが 1 回だけおこったとすれば (単一乗換え)、組換え型の配偶子の割合は 2/4、つまり 50 % になります。たとえ両遺伝子が染色体上でかなり離れていて、単一乗換えがいつも起こるとしても、組換え価は 50 % です。両遺伝子の距離が離れるにつれ、この間の乗換えが 2 回以上起こる機会も多くなると推定されます。A と B の間で 2 つの乗換えが独立におこる二重乗換えは、3 通りの場合が考えられます。いずれの乗換えも、非姉妹染色分体間でおこらなければなりませんが、2 本だけ関与する場合、3 本関与する場合、4 本関与する場合の確率はそれぞれ等しくなります。それぞれの場合において、組換え型の割合は 0/4、 2/4、4/4 になって、合計 12 配偶子のうち 6 配偶子が組換え型です。したがって、組換え価は最大でも 50 % で、この値を超えることは決してありません。