8 月 29 日に高知大学で開催された, 農業施設学会のシンポジウムを聴講しました. シンポジウムの登壇者は 3 名. テーマはそれぞれ「次世代型こうち新施設園芸システム」「還元野菜プロジェクト 電解水素水の挑戦」「高知の特産, 土佐あかうしと柚子を結びつける」でした. 本記事では「次世代型こうち新施設園芸システム」について報告します. 報告っていうか「まとめ」みたいな感じですね.
1. はじめに ( 何が課題か?)
1.1 高知県の現状
- 2016 年, 県人口 初の全市町村減 ( 2016 年 1 月 高知新聞 )
- 高知県の農業経営体数の推移. 25 年で約半減
- 高知県内の園芸用ハウス面積の推移. 20 年で 3 割減 ( H 26 で 1,419 ha )
- 高知県の農業産出額の推移. 20 年間で 35 %減 ( H 27 年で 962 億円. ピークは H 5 年の 1,453 億円 )
- 増加する一方の生産資材価格
1.2 特に高知で営農するにあたり, 所得を伸ばすためには?
- 反収× 面積 × 単価 - 経費 = 所得
- 反収をあげることにこだわるしかない ( 面積は難しい. 単価は市場に左右される )
1.3 米から園芸へ. 難しい規模拡大
- 高知県はとにかく山が多く, 森林面積が広い.
- 耕地面積は 0.6 %
1.4 農産物の選択と集中
- 野菜のなかでも, 高知県はさらに栽培する農産物を選択・集中. 手間がかかる・軽い・単価が高い農産物 ( cf. ナス, ピーマン, ししとう etc )
- 土地利用型は高知の土地事情に合わない ( cf. ニンジン, 大根, ハクサイ etc )
- 耕地面積当たりの農業生産額は, 高知県が日本一 = 生産性が高い
- オランダの収量は高知県県平均の 2 〜 3 倍と格段に高い
2. まだまだイノベーションできる!園芸農業における環境制御技術
- オランダのウェストランドとの交流
- 日本の農業 = 温度中心. 経験と勘が頼り
- オランダの農業 = 徹底した最適データ管理. 温度, 湿度, CO2 を作物の樹勢, 日射量に応じて総合的に環境制御する
- 見える化 → 観測 → 管理
- 足らないものを足す ( CO2 施用などをしなくても, CO2 の量はコントロールできる )
- 環境制御の結果. 県内の主要品目での炭酸ガス施用の効果試験 ( H26, 27, 28 ) で, ほとんどの農場で収量増
- 環境制御ナシ ・・・冬場に起こる減収期と, 繁忙期の落差が問題
- 環境制御アリ ・・・季節による収量のムラをなくし, 高単価期に収量アップを目指す
- 環境制御技術は, どの農家でも, 現状のビニールハウスでも取り組むことが可能
3. さらなる可能性! 次世代型ハウスの導入へ
3.1 ワンステップ上へ. 次世代型ハウス
- 軒高 2.5 m 以上 ( トマトでは 6 m 以上 )
- 耐風速 35m/s
- 環境制御装置を標準装備
- cf. 三原菜園・・・トマト農家にも関わらず, 土日が完全休業 ( パートも含め )
- メリットは収量アップだけではなく, 労力減も ( cf. 腰を曲げなくてもよい )
3.2 一般の農家へも次世代型を導入へ
- さまざまな仕様のハウスの基礎データを比較 ( ハウス構造, 軒高, 展張フィルム, 天窓・換気, 内張やカーテン )
4. こうち新施設園芸システムを全戸へ
- 高知県の新規就農者数の推移は, 増加傾向に.
- 農家数が減るなか, 2000 万円以上の売上げ農家は 10 %増
5. 新たなアグリビジネスの展開. 地域産業クラスター形成へ
- それぞれの地域 ( 産地 ) の特色のある園芸農業を核として関連産業を集積させた農業クラスターをつくり, 地域々々に新たな雇用を生み出していく.
- 県内各地で次世代型ハウスを核とした農業クラスターの取り組みがスタート ( 四万十町, 安芸, 南国, 日高 etc )
- 農業以外のクラスターも ( 計 16 )
- 今年, 来年は, 産出額は上向きか ? ( 1000 億から 1050 億へ )
- 高知で環境制御技術を導入している農家は, IPM で成功している農家がほとんど ( 以前に成功経験のある農家のみ )
www.nogyo.tosa.pref.kochi.lg.jp
会場からの質問
- Q. オランダ型の環境制御を導入しても, オランダ同様の収量は達成できないのではないか. 品種の問題. オランダの品種を導入することは?
- A. 品種導入へのアプローチはしている. ただし, 美味しい品種は収量少.